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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -



勘違いも程々に

「……え、私別に矢巾君のこと好きじゃないけど」
「…は、はい??」

思わず敬語で返事をしてしまうくらいには動揺していた
え?なんで??
コイツ、俺の事好きなんじゃないの??

思い当たる節は何度もあった

教室でクラスメイトと喋ってる時に視線を感じた時、いつもこっちを向いていた
バレーの練習だって時々見に来てた(俺を見に来てたかはわかんないけども)
声をかけるとよそよそしかったけど、それは照れてたからなんじゃ無かったのか?

「え…っと、マジで?」
「うん、嘘でこんなこと言わない」
「いつも俺の方見てたのは?」
「またクラスで馬鹿やってるなーって」
「バレーの練習見に来てたのは?」
「友達の付き添いで。でも岩泉さんってカッコイイね」
「え、いや、まぁかっけーけど」

俺の勘違いをバッサバッサと斬り捨てていく佐倉井
しかも岩泉さんって俺と真逆のタイプじゃねぇかよ

「もしかして俺の事好きな奴だったら付き合ってやろうかなーみたいな??」
「っ」

ニッコリと効果音が付きそうな笑みを浮かべ俺の方に視線を向ける
それは俺がいつも見ていた視線とは違い冷めたものだった

「い、いや」
「じゃあチョロそうとか?」

ダラダラと背中に汗が大量に流れているのを感じる
別にチョロそうとかそんな事は思ってない

ちょっと上から目線的な思いはあったことは否定出来ないけれども

「私の言動が勘違いさせたんなら申し訳ないけど…矢巾くんさぁ、そう言うのやめた方がいいよ」
「……」
「彼女欲しいのは分からなくもないけど誰でもいいっていう考えだと絶対続かないし、楽しくないよ」

図星だった
今、別に好きなやつがいる訳では無い
ただクラスの中で彼女がいる奴の話を聞くと羨ましいなと思う気持ちがあった

「ちゃんと好きな人見つけて、それから告白しないと」
「…おう」
「彼女取っかえ引っ変えしてたら矢巾くんチャラいのにもっとチャラく見えるんだから。せめて恋愛くらいはバレーと同じくらい真剣にしなよ」
「え?」
「?バレー、好きなんじゃないの??」
「あ、まぁ、好きだけど」

なんで練習見に来ても岩泉さんを見てたのにそんな事言うんだ
思わず佐倉井の方を凝視する

「及川さんの後釜なんじゃないの?プレッシャー凄いだろうけど、頑張りたいって思ってるんでしょ?まぁ、外野が何を知ってんだって思うかもしれないけど」
「…そんな事思ってねぇけど」
「私は矢巾くんとは付き合わないけどさ、クラスメイトの応援はしてるよ」


さっきとは違う暖かい笑みを浮かべる佐倉井


「頑張れ、バレーも恋愛もね」



颯爽とその場から離れていく佐倉井の背中を呆然と見つめる

なんだアイツ、あんなにカッコイイ奴だったか?
クラスでも大人しいタイプだったし、そんなに話したこと無かったから知らなかった

相手の事よく知りもしないでよく俺告ったよな
すげーアホじゃん



その日から自分でも信じられないほど佐倉井の事を考えるようになってしまい数ヶ月後に再び告白した時に言われた言葉は


「勘違いも程々にしないとね。まぁ、矢巾くんが私を好きになったのは予想外だったけど、よろしく」

だった

コイツはやっぱり女なのにどこか男気のある奴だったが、無事俺にも彼女ができました


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