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甘いあまい

バレーばっかりに熱を注いでいる自覚は充分あるが、俺にも一応彼女がいる

どこかの誰かさんとは違ってコロコロ彼女が変わるわけでもなく偶にしか出来ないデートにも文句のひとつも言わない彼女がいる

そんな彼女と付き合ってもう2年になる

昔の彼女に「バレーとどっちが大事なの」とよく言われていたが、彼女は1度もその言葉を口にした事は無い
俺に不満がある筈だけどそれをぶつけてきた事も無い
喧嘩をしたことも無い

告白したのは俺からで、付き合って貰えると思ってなかったから玉砕覚悟でいったらまさかのOK
多分その時の俺は相当間抜けな顔をしていた筈だ

「マッキーはさー彼女とどこに出かけるの?」
「んあ?」

練習後ロッカーの隣で着替えていた及川が不意に話題を振ってきた

「何、急に」
「ええーだってさ、明日は体育館使えないわけだしこんなことでもない限り出かけられないじゃん?」
「特に何も予定は無いケド」
「嘘!?かっわいそー」
「うっせ」

何故か憐れみの視線を俺に向けて来たのが無性に腹立たしく俺は少し乱暴にロッカーの扉を閉め部室から出た

彼女がいるって言うとよく派手な女子をイメージされがちだけど、莉津はそれと正反対の位置にいるタイプだった

静かに教室で本を読んだり授業の予習をしているようなタイプ
友達は少ない方で、人の和の中に自分から進んで行く訳では無い
クラスで浮いている訳でもなく普通に交流はある見たいだった

どこが好きなのかと言われるとハッキリと答えられないが俺は彼女の纏う雰囲気が好きだった
何でも包み込んでくれるような包容力あってそばに居るだけで落ち着いた

緩く編まれた三つ編みを右に流している髪の毛を解くと少し困った顔で俺を見る顔や落ち着いたアルト調の声も耳障りじゃなくていつまでも聞いていたい

「貴大君?」

そうそう、俺の名前をこんな風に呼んでくれるこの声

「貴大君!」
「っ!?うわ、ビビった」
「もう、無視されてるかと思った」
「いや、まさか…考え事してた」

眉を下げて困った顔をして俺に近づいて来る莉津
ああ、俺の好きな顔だ

「お前、こんな時間まで何してたん?」
「委員会の後に次回の会議で使う資料を綴じる手伝いを頼まれたの。気が付いたらこんな時間になっててビックリした。でも貴大君と会えたから良かったかも」
「……バカ、俺と会わなかったら帰り道1人になるだろ」
「でも会えたから」

良かったとニッコリ笑う莉津の頭をポンポンと2回叩いた
くそ、可愛いかよ


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