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中学の頃も今と同様、バレーにひたすら明け暮れていた
けど、今とは違ってその時は気になる異性がいた
その人とはたまたま委員会が一緒だっただけでこれと言ってたいした関わりは無かった
委員会の時にごく稀に隣の席になったり、その横顔をバレない様に盗み見たりするだけ
肩につかない長さの髪を耳に掛ける姿を見るのが好きだった
クラスは3年の時に初めて一緒だったがあまり話す事もなく日々が過ぎていった

俺自身も正直付き合うだとか何だとか言ってる周りのヤツらの話を聞いていたから興味が無かったではない
ただ、その時は恋愛よりも部活を優先したかったし烏野に行く為に勉強もしないといけなかった

何となく、教室を見渡した時に視界に彼女が入るだけで特別な気がして…ただそれだけで満足していた
そんな淡い想いも高校に入れば自然と薄れて行くもので

そんな淡い思いだったものをなぜ今思い出したのかと言うと理由は簡単
その彼女が今目の前にいるからだった

雰囲気はあの頃のままだけど確実に違う所が増えていた
髪の毛が背中まで伸びていて緩く三つ編みをしている
制服は…青城か?
白い制服なんて着る人を選ぶだろうに、彼女にはとても良く似合っていた

まぁ、俺が話しかけたところで彼女は覚えていないだろうけど
自分で勝手にそう思って想像以上に傷付いた
このままこの場所にいても仕方ないし、帰ろうと踵を返す


「……澤村君??」


女子にしたら少しだけ低めの声が俺の耳に入ってきた
心地良く俺の耳に届いたその声は、やっぱりあの頃のままの彼女の声だった

踵を返した俺の足は再び彼女の方へと向き直した
俺の視界には少しだけ不安げに眉を下げてこっちを見ていた彼女が写った

「あ、良かった…人違いだったらどうしようかと思った」
「いや、少し驚いて反応が遅れた…すまん」

どうやら俺が間を開けて反応したから間違えたと思ったらしい

「…久しぶりだな、佐倉井」

俺が声を掛けると今度は目を丸くさせた
なんだか彼女は思っていたよりも表情がコロコロと変わるようだった

「澤村君、私の事覚えてたんだ…」
「覚えてるだろ」
「ええ、影の薄いクラスメイト1の事なんて覚えてないと思ってた」
「はは、なんだそれ」

俺にとっては影の薄いクラスメイトなんかじゃないのだから覚えていて当然だ
彼女はそんな事思いもしないだろうけど

「髪、伸ばしてるのか?前は短かっただろ?」
「ああ、あの頃から髪の毛伸ばしてるの」
「ふーん、どっちも似合ってるな」
「…澤村君ってそんな冗談も言うんだ」
「別に冗談じゃないんだけどな」

思わず苦笑いを浮かべる
まあ、お互いあまり話をしてなかったんだから性格も知らなくても当然か
今更ながら気がついた彼女との距離に少しだけ胸がまたチクリと傷んだ
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