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※胃袋掴まれました の続きです

あの日から変わった事
それは週に1回2人でお昼ご飯を食べるようになった事
その日は私が二人分のお弁当を作って調理室で一緒に食べる
黒尾くんはいつも美味しいって言って食べてくれるから凄く嬉しい
でも食べてくれるまではドキドキするんだけどね

今日はその1週間に1度ある黒尾くんと一緒にお昼を食べる日だ
誰もいない調理室で食べるのが2人の中で暗黙のルールみたいなものになっている

黒尾くんは毎回どれが美味しかったのかを言ってくれるから彼の好みもなんとなく把握できるようになった
それに何より、好きな人に自分の手料理を食べてもらえるのは嬉しいのだ
和食中心のお弁当が好きだと言うことで一緒に食べる時はなるべく和食にしている

私は元々週に1回は調理室で部活の献立を立てたりするのでいつもお昼を一緒に食べてる友達はこの事を知らない
言ったらからかわれるのは目に見えて分かるし、皆まさか私が黒尾くんとお昼を一緒にしてるとは思いもよらないだろう


私は今、調理室に1人でいる
黒尾くんは今日バレー部の顧問の先生に呼ばれているみたいで少し遅れると連絡があった
その間に私は次に何を作るかの計画を立てながら待っている
次は何にしようかな?
この前は和食だったし、今度は洋食かな?それとも中華??

「うーん…洋食、にしようかな」

うん、そうしよう
洋食は見た目も綺麗だし、盛り付けの色合いも考えないといけないから練習にもなりそうだ
どうせならみんなが好きなものでちょっと難しめなのがいいな

…オムライスとか?
ケチャップライスを玉子で包むのは結構難しいし
それにサラダとスープを付け合せにしたらいいかも

まぁ皆の意見を聞いてみないことには始まらないんだけどね


「それ、次作るヤツの献立??」
「っ!?く、黒尾くん?いつからそこに??」
「ちょっと前くらいからだな。何か真剣に考えてたから一段落つくの待ってた」
「そ、そうなんだ…ごめんね?お腹空いた??」
「おー…もう腹ペコ」

そういった後まるでタイミングを見計らったかのようにお腹がぐぅっと音を立てた
私ではないので勿論鳴ったのは黒尾くんだろう
お互い顔を見合わせクスリと笑った

「今日は昨日の夕飯の煮物とほうれん草の和物、メインは豆腐ハンバーグです!」

じゃん!と風呂敷包からお弁当を取り出し黒尾くんの前に置く
彼は待ちきれないと言わんばかりに包を開けて弁当箱の蓋を外した

「おお!めっちゃ色合いが綺麗だな」
「そうかな?今日はちょっとヘルシーにしてみたから黒尾くんにはもしかしたらちょっと物足りないかも」
「いや、俺豆腐ハンバーグ結構好き」
「そうなんだ、良かったぁ」
「まぁ佐倉井の作るもん全部美味いからなんも心配してないけどなー」

ははは、と何でもないように言って箸をつける黒尾くんに思わず照れてしまう
好きな人に褒められるのはやっぱり照れくさいものなんだよ
もぐもぐと咀嚼する様子を眺め、味はどうだったか尋ねる

「うん、美味い。つーかまじで母ちゃんより美味い」
「あはは、それは言い過ぎだと思うけど…でも、ありがとう」

黒尾くんのお母様のご飯を食べた事がないからコメントのしようがないけど、美味しいと言われて嬉しくない訳が無い
美味しいとの評価も貰ったし自分も食べようとお弁当の蓋を開けおかずをつつく

「あーあ、こんなうまい飯毎日食えたら幸せなのになぁ」

ぼそりと呟いたその言葉にぴくりと反応する
思わず箸で摘んだ煮物が落ちそうになった
目を丸くして隣に座る黒尾くんを見ると彼もこっちを見ていた

ドクリと心臓が音を立てた


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