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「#幼馴染」のBL小説を読む
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「………はぁ」
「何ため息ついてるの」
「いやー?別に」
「…別にって顔してないんだけども」

俺は放課後某ファーストフード店に寄り、向かいに座っている(一応)彼女を見詰める

「はぁ」
「いや、だからさぁ!人の顔見てため息つくってどんだけ失礼なわけ?!」
「いや、もうなんて言うかさぁ…なんかさぁ」
「ハッキリしないなぁ…それでも男かね二口君や」
「立派な男の子ですよ、ちゃんと…ただ、たださぁ」
「…………なによ」
「理想と現実って違うよなぁって実感せざるを得ないなって」
「何カッコつけた言い方してんのよ!それって私のこと馬鹿にしてるよね!?絶対してるでしょ!!」
「してないしてない」
「ほんとさー!それが彼女に対する態度?!」
「ごめんて」
「なによ…堅治なんてにろの癖に…」

一言謝ると渋々と言った感じに黙り俺のポテトに手を伸ばした
なんだよ、にろって…まぁ読めなくもないけども

つーか…自分のナゲット食えよな
まぁ、ここで口に出したらまた激情しそうだから言わないけど

じっと見ていたら視線に気がついた莉津が顔を上げた

「なに?」
「いやー、何も」

顔はいいんだよな、やっぱり
さっきからほかの席の野郎どもがチラチラ見てるし
そして何よりの理由としてはお嬢様学校の制服を着ているからでもあるだろう
県内でも有名な女子高に通っている莉津と俺が何処で接点が合ったのかというと理由は簡単、俺の通っている伊達工業高校……通称伊達工の近隣にその女子高があるからだ

「堅治、」
「な、なに」
「私のナゲットあげる、はい」

突然そう言って俺の方にナゲットにソースを付けて差し出した
いつもはそんなこと面倒臭がって絶対にしないはずなんだけどな

「人に見られるけどいいわけ?」
「ん?別に…見せつけてやれば良いじゃん、ほら堅治…あーん」

後半の方はわざと大きめの声で響くようにしていつもは出さないような甘い声を店内に響かせる

…こいつはホントになんと言うか性格が悪い
まぁ、この俺が言うのもなんだけど

とびっきりの店員顔負けのスマイルつき
俺もニッコリと笑ってパクリと食べてやった
傍から見たらさぞやムカつくバカップルに見えていることだろう

「どう?美味しいでしょ?」
「莉津が食べさせてくれたんだから当たり前だろ?」
「もー!堅治ったら!」

きゃ!っとわざとらしく恥じらう莉津
心の中では笑いそうになるのを必死でこらえる

「俺も食べさせてやるよ」
「えー、恥ずかしいな」
「ほら、いいから…」
「…もー」

パクリと小さな口を開いてポテトを食べた莉津
その後少しだけ顔を赤らめ自分の手で残りの分をちょびちょびと食べている

ちらりと店内を見回すと出口の方へ急いで向かっている男子学生がいた
その制服は確かひと駅先にある進学校だったはずだ

「お前も大変だなぁ」
「…まぁね、というかさっさと出よう」

この空気なんか嫌
そう言って自分の残りのナゲットを口に放り込み席を立った
おいおい、さっきの小さなお口で上品に食べてたのは幻か

「お前がしたんだろうが、この空気に」
「だってさー堅治も気づいてたでしょ?」
「まぁな」
「最近ちょっとしつこくってさ、困ってたの。ちゃんと彼氏いるって言ってんのに信じてくれないし」
「まさかストーカーとかされてるわけじゃねぇだろうな…」
「それは無いと思う…多分」
「多分って…」
「いや、さっきはたまたまだと思うから大丈夫だって」
「……今日帰り送ってく」
「へ?…いやいや、大丈夫だから!」
「いいから、出るぞ」
「う、うん」

莉津の手を引いて店内を出る
外は既に薄暗くなっていてやっぱり1人で帰らせるのは憚られた

「お前さ、いい加減猫かぶんの止めれば?」
「……それが出来たら苦労しないっつーの」
「女子ってめんどくせーのな」
「まぁねぇ…女子高だから特にね」

そう言って1つため息を零した

「でもさ…こんな私を憧れとしてくれてる後輩たちにも見せられないよね、こんな姿」

俯いた時にパサりと髪が顔にかかった
俺はそれを退かすために手を伸ばした

「俺はいいと思うけどな」
「ん?」
「素のお前」
「ふふ、なに?慰めてるわけ?」
「……まぁ、そんなとこ」
「そっか…ありがと」

街灯に照らされた莉津の姿が妙に様になっていた

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