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雪ヶ丘中にいた頃、バレー部として活躍することが出来なくて1人で練習をしていた。

バレーは一人じゃできない
分かっていても、俺はやっぱりバレーが好きで何処かしこで邪魔にならない様にやっていたんだ

まだ俺が1年生の頃だった

例に習って俺はまた1人で練習をしていた
人通りの少ない廊下にボールが腕に当たって跳ねる音が静かな空間によく響いた

リズム良く、とはいかないけどボールを落とさないように注意しながらやっている時だった

突然空き教室のドアが勢い良く開いた


「っ?!うわぁ!」


誰もいないと思っていた所に人が現れた事に驚いた俺はボールを落としてしまった
コロコロと転がりボールはその空き教室のドアの前で勢いを落とし止まった

開いたドアから出て来たのは女子生徒だった

その人は目の前に落ちているボールを拾って俺の方を向いた


「っ、あ、あの…」
「これ、キミの?」
「は、はいっ!!」


女の人にしては少し低めの良く通る声
規律を乱さない程度に着崩した制服

俺の姿を写すその瞳は真っ黒で吸い込まれそうなほど綺麗だった
彼女のキリリとした瞳は真っ直ぐに俺を見つめていて金縛りにあったかの様に動けなかった

「…キミ、1年?」
「あ、は、はい」
「……うち、男子バレー部あったっけ」

ボソリと呟いた言葉に俺はピクリと肩が動いた

「えっと…部員、俺しかいなくて…部活とも認められなくて…あの、だから…その…」
「1人で練習してるの?」
「は、はい」
「…そう」

その人は俺から視線を外しボールをクルクルと両手で回した

俺から視線を外した事でその人をじっくりと見詰めることが出来た
肩につかない位の長さの髪の毛は癖毛なんて言葉を知らないかのように艶やかで真っ直ぐで
黒い髪に映える色白の肌
その横顔はまるで一枚の絵のようだった

「…見詰めすぎ」
「ほわぁ!?す、すみませんっ!!」
「…別にいいけど、流石に見すぎ」
「あ、あの…先輩、ですよね?」
「あ、うん、3年…君は1年でしょ」
「はい」
「これ、返す」

そう言ってその人はバレーボールを俺の方へ軽く投げた
それをキャッチしてお礼を言う

「ありがとうございます!」
「ねぇ、練習相手になってあげようか?」
「…はい?」

思わず自分の耳を疑った
今、なんて言った??


「だから、バレーの練習に付き合ってあげようかって」
「え?!」
「嫌なら良いけど」
「いや!!是非、お願いしますっ!!」


勢い良く頭を下げると頭上からクスクスと笑い声が響いた
顔を上げると、その人は口元に手を当てて笑っていた


「ははっ、君、必死過ぎ…アタシ、佐倉井莉津」
「俺は日向翔陽です!よろしくお願いします!」
「うん、よろしく、しょう」


笑う彼女は、凄く可愛かった


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