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まだまだ寒い時期
部活動停止中の俺は近所のママさんバレーに混ざって練習をさせてもらっていた

今日の練習もおわったその帰りいつもの帰り道とは違う道を通って帰ることにした

街灯も少ない田舎道

「…っさむ」

思わず呟いた言葉と共に息が白くなって吐き出された
そう言えば今朝のお天気お姉さんが夜は冷え込むって言ってたな…

そんな事を考えながら学ランのポケットに両手を入れ首に風が入らないように肩を竦め足を速める

自分の家へと続く道を歩き進めると前方に1人の女の人が歩いていた
その人の後ろ姿は見覚えがあって声を掛けようかどうか迷う

…なんて声を掛けたらいいんだ?
会うのは久しぶりだし、普通にお久しぶりです、とか?
元気でしたか、仕事はどうですか

いやいや、ありきたりすぎじゃねぇか?
悶々と考えながら一歩一歩距離が短くなっていく

よし、いけるぞ!あくまて自然にだ!
そう意気込んで声を掛けようとしたらその人が突然振り返った

振り返ったその人はやっぱり自分が想像していた人物で…

俺の姿を目にしてその人は少しだけ目を細めてそして綺麗に笑った

「夕くん!久しぶり、元気してた?」
「は、はい!お久しぶりです!!莉津さんも元気でしたか?!」
「あはは、勿論!元気だよー、今日もバリバリ稼いできたからね!」

冗談を交えてガッツポーズをするこの人は佐倉井莉津さん
俺の家の近所に住んでいる所謂歳上の幼馴染みだ

ニッコリと笑うその顔は昔と変わらず綺麗なままだ
俺よりも5歳離れている莉津さんは大学には進学せずそのまま就職した
社会人になってもう数年経つ莉津さんは俺からしたらもう既に立派な大人だ

学生の俺と社会人の莉津さんとでは縮まらない距離がある

俺の初恋は未だに継続中だ

「莉津さんはいつもこの道を通って帰ってるんですか?」
「ん?んー…今日は気分かな、学生の時はよくこの道通って帰ってたの」
「そうなんすか?」
「うん、まぁ部活やってなかったからこんなに暗い時間に帰ったこと無かったけど」

こんなに暗いと見えてくる景色も何だか違うみたい、とそれでも楽しそうに笑っている

「夕くんは部活帰り?」

そう言われて思わずドキリとした

「…えっと、まぁ、そんなもんです」
「……そっか」

思わず言葉を濁した俺に追求はせずに相槌をうつ莉津さんは何となく勘づいているんだろうと思う

「夕くんはバレー昔から大好きだもんね」
「はい」
「私はいつも見てたから知ってるよ、練習を人一倍やってるの」
「……はい」
「今度さ、夕くんがバレーやってるところまた見たいな」
「え?」
「あれ?駄目だった?」
「い、いや!全然!!むしろ来て欲しいっす!…でも」
「…でも?」

部活動停止だし、それに旭さんのこともあるし…
それを莉津さんに言ってもいいのだろうか

「…今、部活の先輩とちょっと色々あって」
「そうなの?」
「はい、だから…それが解決したら試合でも、練習でも何時でも見に来て欲しいです」
「ふふ、そっか、それじゃあ解決したら教えて?絶対応援行くから」
「はい!」

突然莉津さんは足を止めた
俺もそれに倣って足を止めると莉津さんは自分の首に巻いていたマフラーを取った

「莉津さん?」
「夕くん、寒そうなんだもん」

そう言って俺の首にそれを巻いた
微かに莉津さんの匂いがしてドキドキした

「いや、そしたら莉津さんが寒いじゃないですか!」
「私は平気、そこまで寒がりじゃないしもう家も近いし」

そう言えばもう莉津さんの家の近くまで来ていた
なんか、あっという間だったな

「じゃあ、お言葉に甘えて…」
「うん、そうして下さい」

もう少し帰り道が長かったら良かったのに
そしたらもっとたくさん莉津さんと話せるのに…

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