久しぶりの地元
長い間留守にしていたから酷くこの空気が懐かしい
住んでいた時はこんな田んぼだらけの田舎からさっさと出て行きたいなんて考えていた癖にこの田舎が恋しくて仕方が無かった
それは確かにこの汚染されていない新鮮な空気であったり
コンビニなんかも都会みたく沢山なくて点々としているところだったり
両親が未だにここに住んでいることだったり
そして何よりの一番の理由はここに私の恋人がいるからだった
私は大学を4年間通った後海外へ留学した
長期休みになるとこっちへ帰ってくるもののそんなに頻繁に来れるワケでもなかった
あれから3年経って私は25になった
いつの間にかこんな歳になっていた事に時間の流れの速さを実感した
彼は今どうしているだろうか…
一応連絡を取ってはいたものの年に数回しか会えないから不安はある
こんなに離れていて愛想を尽かしたんじゃないか
他に好きな人が出来たんじゃないか
それこそ考え出したらキリがない程に…
だから私はサプライズの意味を込めて彼に今日帰省する事を伝えていない
私はキャリーバッグを転がしながら彼が居るであろう所に向かっている最中だ
どんな反応をしてくれるのか、驚いた顔が容易に想像出来て口元が緩んだ
「待っててね、繋心」
愛してやまない彼の名前を口にして私は目的地まで足を進ませた
早く、会いたいな
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