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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -




「……えっと」

今、佐倉井はなんて言った?
あまりの衝撃に頭がうまく働かない
口が乾く

言葉を発しようとするが、パクパクと動かすのみで音は出てこない

佐倉井はなんて事ないような顔をして俺の方を見ている

「ふふ、凄い…鳩が豆鉄砲を食らったような顔」
「いや…」
「あ、バス来た」
「え」
「じゃあ、澤村君…またね」

佐倉井が乗るバスがやって来た
さっきの告白なんて、無かったかのように振る舞う姿に俺の妄想だったのではないかと思った

だけど、バスに乗ろうとした佐倉井の横顔が寂しそうななんとも言えない表情で
俺は佐倉井の手を取ってしまった

「すみません!乗りませんから出発して下さい」
「え、ちょ…澤村君??」
「佐倉井、行くぞ」
「行くって…ここら辺何にもないよ??」

戸惑いの声を上げる佐倉井だったが、手を離す気はない
これを逃したら多分もうこの話は無かったことにされてしまうという確信があった

あて先なく歩いてたどり着いたのは河原だった
人もまばらで時々犬の散歩に来た人がいるくらいだった

「…佐倉井」
「澤村君って意外と強引なんだね、知らなかった」
「俺は多分、佐倉井よりも前から佐倉井の事気になってたよ」
「…え?」
「好きになったのは多分俺の方が先だ」

繋いだ手に力が込められた
俯いていて表情は見えないけど、髪の間から覗く耳が赤く染まっていた

「私、望みないかと思ってた」
「なんで」
「澤村君、他に好きな人いると思ってたし…私みたいな女タイプじゃないだろうなって」
「まぁたしかにバレーばっかで付き合ったりとかは無かったけど」
「…どうしよう、嬉しい」

絞り出したような声には言葉の通り嬉しさが滲み出ていた
繋いでいない方の手で佐倉井は目元を覆った

「泣くほど嬉しいのか?」
「…嬉しいよ、夢みたいだ」
「夢だったら俺も困るな」

顔を上げさせて出来るだけ優しく目元を拭う
頬に添えた手に急に擦り寄ってくるものだからドキリとする

「でも私、これが夢だったらきっとまた澤村君の所に行って今日みたいに告白するも」
「?普通嫌じゃないか?夢だったら」
「ううん、こんなに嬉しい思いが出来るなら何度でも澤村君に告白したい」
「…はぁ」

なんだその理由は、可愛いな

「呆れた?」
「その逆かな、でも俺は今日の日はもう1回だけでいい」
「どうして?」
「だって付き合ったらもっと楽しいことだったり、嬉しい事がたくさんあるはずだろ?それを佐倉井と一緒にして行きたいから」
「っ!わ、私も!そっちの方がいい」
「だろ?」
「じゃあ、今日はバス停まで戻る間手を繋いで歩いてもいい?」


はにかみながら笑う佐倉井に俺もつられて笑みが零れる


「手ならもう繋いでるけどな」






(莉津ちゃん!今日こそ練習見に来てよ!)
(あ、及川くんごめんね、今日は烏野に行くから行けない)
(な!!?)
(あとね、澤村君とお付き合いする事になったの。及川くん相談に乗ってくれたから報告)
(そ、うなんだ…おめでとう)
(うん、ありがとう。見学はまた今度誘って)
((ドンマイ及川))

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