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「#幼馴染」のBL小説を読む
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「お、佐倉井!丁度いいところに!」
「…え」

昼休みに委員会の集まりがあった後、職員室の前を通りかかった時に担任の先生とすれ違った
私は会釈をして通り過ぎようとしたら呼び止められてしまった


△▼▽▼


「……はぁ」

女の子に重たい資料を1人で運ばせるって一体どういう神経しているんだ、あの先生は
まぁ確かに?
私はほかの女子よりも頑丈ですよ?
身長もあるし、握力は平均より上ですけど?
でも、流石に1人でさせるかなぁ、普通

マミちゃん曰くノソノソと歩いている私は今ホントに熊のようなんだろうなぁ
誰にも聞こえないようにひっそりと再びため息を零した

「………佐倉井サン?」

階段を登っていたところで頭上から声をかけられた
どこか聞いたことのある声だなと思い顔を上げるとなんとそこには月島くんがいた
彼のことは私も知っている
何せ数少ない私よりも背が高い男子だからだ
ただあの威圧感がある雰囲気が少しだけ苦手だった

「…月島くん、」
「それ、次の授業で使う資料?」
「あ、うん。職員室の前を通ったら頼まれちゃって…」
「ふーん」

興味なさげにそう答えた月島くんは何故か私の方へ手を差し出した
意味がわからず首をかしげていると彼は眉間にシワを寄せた

「手伝うから、早く渡しなよ。休み時間が終わる」
「えっ、い、いいよ!月島は早く教室に戻って…」
「…あのさぁ、1人でそれ運ぶ気なの?落としてばらまかれたら困るんだよね。今にも落としそう」
「そ、そんな事しないけど」

まぁ実際重くて腕がピリピリしてきてるけども…

私の考えなどお見通しとでも言わんばかりに月島くんは私の腕にある資料を半分以上持ってくれた

「あ、ありがとう」
「別に…落とされて汚れたプリント使いたくないだけだから」
「………」

やっぱり月島くんは苦手だなぁ
何となく隣を歩くのは躊躇われて彼の後ろをトボトボついていく

「あのさぁ、佐倉井さん」
「!、な、なに?」
「その猫背、癖なの?」
「あ、いや…これは…身長が少しでも小さく見えるように」

ボソリと呟いた言葉は彼の耳にもしっかり届いたようだった
思わず俯いてしまった私は立ち止まっていた月島くんの背中にぶつかってしまった

「っ、わ、ごめん!」
「…やめた方が良いんじゃない」
「え?」
「それ、」

それ、とは猫背の事だろうか?
止めたくても癖になってしまってなかなか治らなくなってしまってるんだけど

「下ばっかり見てるからさっきみたいにぶつかるんだよ」
「そ、それは月島くんがいきなり立ち止まるから…」
「でも前を向いて歩いてたらぶつからなかったはずでしょ」
「…まぁ、そうかもしれないけど」
「ほら、また下向いてる」

なんだか馬鹿にされているような気がした
なんであんまり接したことのない月島くんにこんなこと言われなきゃならないの
思わずキッと睨み付けてしまった
前髪に隠れているから相手には見えないかもしれないけど
そんな事を考えていたら突然視界が明るくなった

「っ!?な、なに!?」
「へぇ…僕の事睨んでたんだ」
「ちょっと、離して…」
「ふーん」

前髪をあげていた手が離されてパサリと視界を遮る

「そっちのほうがよっぽど良いよ」
「な、にが…」
「身長だって、別にそのくらいが丁度いいって人だっているだろうし」
「…いないよ、そんな人」

彼は、私が長身なことがコンプレックスだと気がついていたのだろうか

「いるよ、少なくとも僕はこのくらいが丁度いいけど」
「なっ」
「ああ、あとさっきの睨みつけてた顔もなかなか良かったよ」
「…意味がわからない」

そのまま月島くんは教室の方へ歩いて行ってしまった
ホントに、月島くんは一体何が言いたかったの?
意地悪なのか、優しいのかよく分からない

なんなの…

『少なくとも僕はこのくらいが丁度いいけど』

さっき彼が言った言葉が頭の中で響いた


…彼が一体どういう意味で言ったのか分からないけど、少しだけ嬉しかった
このくらいがいいと言ってくれる人がいるんだって分かったから

まだ、月島くんの事をよく知らないから
彼とまた話してみたいと思った
少しだけムッとしたけど、きっと彼は天邪鬼な性格なんじゃないかな
だって本当に意地悪な人は重たい資料運びを手伝ってくれたりしないもんね

これは私が彼と少し仲良くなりたいなと思った日の出来事


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