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まぁ普通ならどこかのファストフード店に入ったりするんだろうけど生憎この近辺にはそんなものは無いし、金銭的にもお小遣いを貰う前な為厳しい
だからという理由では無いけど私達は行く途中で買った飲み物を片手に土手沿いに腰を下ろし会っていなかった間の出来事を話していた
東峰は部活での出来事や進路の話などをポツリポツリと話した
試合でどうだったとか、相手のサーブで凄いのを打つ人がいたとか

うんうん、知ってるよ全部見に行ってるからね
勿論東峰に内緒でだから口には出さないけど

東峰は学校を卒業したら就職するらしい
まぁ進学組では無いからそうなのかなぁと何となく予想は出来たけど

因みに私は進学組で推薦で夏のうちに決定してた
東峰も当然だけど知ってる
陸上でもそこそこの成績を残してたし自慢じゃないけど頭も悪くは無いから
県外には出ないと伝えた時の東峰のあのほっとしたような表情は可愛かった

もし県外に出るってなったら捨てられた子犬のような顔をしたかもしれない
澤村君あたりがもし一緒にいたらこのひげちょこ!って一喝してたかも
私はへなちょこな東峰も好きだけど…
それを友達にこの前惚気たらそんな事言うのはこの世で莉津だけだって死んだ様な顔で言われた

買ってきた飲み物も飲み終え缶を芝生の上に置いて寝転がった
視線の先にはオレンジ色に染まった空そして夕日でキラキラと光る川
どこかのグランドから聞こえてくる子どもたちの声

何だかすごく懐かしい気がした

「夕日、綺麗だね」
「…あぁ」

横にいる東峰にそう声をかけると東峰も同じ様に川を眺めていた
不意にこっちを見た東峰の顔は夕日で赤く染まっていた

「東峰も寝転がってみたら?気持ちいいよ」

私の言葉にコクリと頷き同じ様に寝転がった
横を向くと絡む視線になんとなく擽ったくなった

「…なんかさ、目線が同じって新鮮…いつも私が見上げるばっかりだから」
「うん、俺もそう思った」

クスリと笑いあって不意に沈黙が訪れた
全然苦痛な沈黙じゃなくて
落ち着く感じでなにか話さなきゃって思うことも無い

「折角だから偶には東峰を見下ろしてみようかな!」
「…え?」

ぐっと両手に力を入れて起き上がる
キョトンと目を丸くしてる東峰にクスクスと笑いを零す

「芝生、付いてる」
「え、嘘」

大きな手が私の方に伸びてきて髪を触った
撫でるように触るのがなんでかわからないけど胸がギュッとなってドキドキする

そのまま離れようとする東峰の手を掴み自分の頬に持っていった
大きな手ゴツゴツした手が強ばるのが分かった

「…え、あの…佐倉井??」
「ねぇ、東峰」

ゴクリと喉が鳴ったのはどっちなのか
ドキドキを通り越してバクバクと壊れそうなほど忙しなく動く心臓に構わず私は東峰の顔に近づく
今の私の顔は夕日に負けないくらい顔が赤いと思う

私と東峰は触れるか触れないかの距離までになった
多分私が口を動かしたら唇が触れ合うだろうということは容易に想像出来た
そして敢えてその距離で私は口を開いた

「ねぇ、東峰…私、そんなに魅力ない?…東峰になら私、どんな事されてもいいのに」
「っ…!!」

私が喋る度に微かに触れる唇がもどかしくてお互いの唇を最後にくっつけて離れる
私のよりも少し固くて乾燥していた唇は男の子のものってこんな感じなのかな、なんて思った

「え!?ちょ、え、?!?!佐倉井!?」
「よし、帰ろうか…もう日が暮れるよ」
「ま、ままま!待って!!え!?な、はぁ!?」

動揺しすぎて何を言ってるのか分からない東峰に少しずつ落ち着きを取り戻してきた

「も!もう1回してもいいですか!?!?」
「…っぷ!!」

あんまりにも必死に言うものだから思わず吹き出してしまった
その様子が可愛くて少しだけ意地悪したくなった

「東峰の唇、カサついてたから暫くはおあずけです!!」
「ええ!?」
「ちゅーしたかったらリップ使ってね…それとも私の使う??」

カバンからポーチを取り出して東峰にリップを見せる
私の唇をうるうるにしてくれたリップ
それを自身の唇に付けてまた東峰の唇に口付けた

「…東峰はおあずけだけど、私はおあずけじゃないからね」
「ぇえ!?なっ!……ぁあ…もう」

佐倉井には敵わない、そう小さな声で零した東峰にまた私は笑みを零した


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