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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -




部活が終わってからちゃんと汗ふきシートでさっぱり拭き取る
シトラスの香りがほんのりと香ってきた

いつもは手ぐしで整えるだけの前髪も今日はポーチから櫛を取り出してちゃんと整える
ロッカーにある鏡で身だしなみの確認

「先輩今日はなにか予定でもあるんですか?」
「へ?!」

隣にいた後輩から突然声をかけられ思わず変な声を上げてしまった
本当に疑問そうに尋ねてきた彼女の後ろからニヤニヤとしている友達

「そーなのよぉ!この子今日は久しぶりに彼氏と一緒に帰るから浮かれちゃってんのよぉー」
「えっ!そうなんですか?!先輩彼氏いたんですか?!」
「おい、ニヤニヤしながら言うのやめてくれない?」

別に、浮かれてなんかないし
…彼氏に会うんだからいつもより気にかけるのは当たり前でしょ

「っていうか後輩ちゃん、私彼氏いなさそうに見える?」
「あっ!いや!そういう訳じゃなくて!いそうな雰囲気なかったので…」
「まぁこの子サバサバしてるからねぇ…」

まぁ、私も敢えてそこは否定しないけどさ
挨拶もそこそこにして私はさっさと部室から出る

校門前で待っているだろう東峰を思うと早く早くと足取りが自然と速くなる
心無しか口元が上がってきているのが自分でも良く分かった
やっと見えてきた校門前にはやっぱり東峰がそこにいて
携帯を弄っているためまだこちらには気付いていないようだった
どうせなら吃驚させてやろうと途中から足音を消して息を潜めて東峰の背後に立つ

そして背伸びをして首筋にふぅっと息を吹きかけてみた

「うひゃあ?!?なっ…!!佐倉井?!」
「っぷ!!うひゃあって…くくっ」

女の子みたいっ、かわいいなぁ私の彼氏は
顔を真っ赤にさせて私のことを咎める東峰だがいまいち迫力が足りない

「お待たせ、ごめんね?」
「…っ、別にいい、けど」
「まだ怒ってるの??」
「普通怒るでしょ、あんな事されたら」
「だってさー普通に声かけるだけじゃつまらないでしょ」
「普通でいいよ、普通で… 」

心臓に悪い、と思い出したのかまた少し頬を赤く染めた

「ふふ、」
「笑うな…」
「あは!東峰は可愛いねぇ、ホント」
「……そんな事言うのは佐倉井だけだよ」

それはなんと役得だろうか
こんなに可愛いと知られたらきっと東峰は大人気になってしまう
だから、私だけが知っていればいい

クスリとまた1つ笑みを零し私は東峰に手を差し出した
私の手のひらを見つめる東峰はきょとんとした顔をして私の顔と手のひらを交互に見た

「手、繋がないかなって」
「えっ!?」
「いやなら良いけど…帰ろ」
「つ、繋ぐ!!繋ぎます!!!」
「…っ、必死すぎ」

恐る恐るといった感じに私の手をそっと包む大きな手
やっぱり東峰の手のひらは私なんかよりも2回りほど大きくてすっぽりと隠れてしまった
こんなに大きければバレーボールなんて片手で掴むことが出来るんだろうなぁ
ぎゅっと手と手を絡め合う所謂恋人繋ぎに変えるとビクッと東峰が反応した
指の1本1本が骨張っていてゴツゴツしてる
前に手を繋いだのが久しぶりすぎて感覚を忘れていたみたいだなぁ、なんて緊張しまくりの東峰をそっちのけで呑気に思った

「…佐倉井、」
「んー??」
「……何でもない」
「なにそれ、へんな東峰」

言葉の代わりに私の手を握り返した東峰
そっと横を盗み見ると照れくさそうに私を見ていた東峰と視線が絡んだ

東峰の顔は夕日に照らされて赤色に染まっていた
多分、夕日のせいだけでは無いと思うけどね

「あ、あのさ」
「ん?」
「まだ帰り余裕ある?」
「そうだね、まだ全然余裕」
「じゃあさ、どっか寄り道しない?」
「うん、勿論!」


なんだ、さっき言いたかったのはこの事か
私が断るとでも思ったのかな?
そんな事有り得ないのにさ
東峰はもっと私な好かれてる自信を持った方がいいと思うなぁ…

クスリとまたひとつ笑みをこぼして繋いだ手をぎゅっと握りしめた

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