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東峰side

放課後の教室に残りグラウンドを眺める
視線の先には陸上部の練習をしているその中に自分の彼女がいる
…いや、彼女って言うのも烏滸がましいんだけども

彼女、佐倉井莉津は隣のクラスで陸上部に所属している
陸上部だと言うのに元々日焼けをしないタイプなのか、他の部員達よりも色が白い
肩につくくらいの髪を上に上げて一つに括っているのが走る度に揺れている
スラッとした長い足に程よい筋肉がついた腕
スレンダーな身体はなんと言うか……エロい

まぁ、そんな事口が裂けても言えないけど

ちょっと強い口調だけど、周りに気配りも出来るし…そして何より人を見た目で判断しない

同級生のなかでも断トツで怖がられていた俺に真っ先に声をかけてきたのは佐倉井だった
去年は同じクラスだった事もあり仲良くしてくれた彼女に淡い恋心を抱いた
まさか佐倉井が告白してくれるだなんて思っていなかったから驚いた
多分、佐倉井からの告白が無ければ今付き合うという事も無かったんだろうな
…俺は臆病だから
だから佐倉井には本当に感謝しないといけない

あの時初めて佐倉井が涙を流したのを見た
強気でいる彼女にもそんな所があるんだって分かって、可愛いって思った
いや…勿論普段から可愛いけどどちらかというと綺麗って言った方がしっくりくるタイプだからギャップというか、なんと言うか

それになんか最近妙に綺麗になってきた佐倉井を見てちょっと焦る
もしかして他に誰か好きなヤツでも出来たんじゃないかとか
何でも悪い方にばかり考えてしまう俺の悪いところだ

でも正直最近の佐倉井は本当に綺麗になった
なんだろう…色っぽい?
っていうか、目のやり場に困る事が多い
髪の毛を耳に掛けたり、お菓子を食べた後に指を舐めたり、身長差のせいもあるけど上目遣いだったり
ほんと、俺はどうしたらいいんだ
初めて出来た彼女だから大事にしたいし、こんな事ばっかり考えてるとか知られたくない

彼女の動作一つ一つにドギマギしてしまう
こんな事がバレたらきっと佐倉井に引かれてしまいそうだ
俺たちは付き合って1年経つけど未だに何も無い
勿論、そういう事がしたくないわけじゃない
こんなナリだが俺だって健全な男子高校生だ
想像した事が無いなんてあり得ないことだ

でも、佐倉井の事を大事にしたいって気持ちの方が強いし
無理強いはしたくない

大切な彼女だから、無理矢理して嫌われたくないし

以前この事を大地やスガに相談したら、2人とも物凄く憐れむような目で見られた
そして一言『へなちょこ』と言われた

どういう意味かなんて聞くまでもなく、付き合って1年経つというのに何も無いなんてお前がただのへなちょこだ。とそう言いたいんだろう
全くもってその通りなので反論の余地は無かった
事実、俺もそう思ったし…


陸上部の練習はそろそろ終わるのか道具の後片付けを始めていた
時計をみるといつの間にか時間が経っていて、そんなに物思いに耽っていたのかと思った
同じ部員と楽しそうに話をしている莉津を見て自然と口元が綻んだ

「よし、そろそろ下に降りるか」

誰も居ない場所で独りごちて俺はカバンを肩にかけ教室を後にした


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