そもそも下校の時だって一緒に帰れない時の方が多い
私は陸上部に入ってるし、東峰はバレー部
最近烏野の男バレは強くなってきていると専らの噂だ
練習だって凄く頑張っているのが伝わる
そんな中、一緒に帰ろうなんて誘えない
たくさん練習して疲れてるだろうし…
私は時々一緒にお昼食べたり下校出来ればそれでいい
それにバレーしてる時の東峰はすごくカッコイイんだ
自慢するところがあまりない私の数少ない自慢なんだ
こんなに凄い彼氏を持っているってこと
昔から人を見る目だけは長けていた
この前内緒で試合を見に行ったけど、烏野は強かった
セッターも凄かったし、ミドルブロッカーの高身長の人や小さな10番の彼のジャンプ力と瞬発力
リベロの人の反射神経、澤村君の安定したトス
坊主くんも東峰には負けちゃうけど凄い力強いスパイクだった
……まぁ、東峰が1番カッコよかったけど
これは私の贔屓目だろうけど
みっちゃんにそう言ったらそんな事言うのはアンタだけだって言われたし
あんなにカッコイイのにそれが分からないなんてみっちゃん見る目ないなぁって言い返したら思いっきりほっぺたを抓られた
…あれは痛かった
しかもちょっと爪が伸びてたからそれが食い込んでなお痛さが増してた
思い出してまたじんわりとほっぺたが痛んだ気がした
「あれ、佐倉井?」
聞きなれた低めの声に振り返るとそこにいたのは予想通り東峰だった
体育服を着ているところを見るとさっきまで体育だったみたいだ
「あ、東峰だ。体育だったの?お疲れー」
「あ、うん…それ、何処まで運ぶの頼まれたんだ?」
それ、と言うのは私の腕の中に抱えられているノートの事だ
私は今、先生に頼まれて提出用のノートを職員室へ運ぶ最中に考え事をしていて、その途中で東峰に会ったと言うわけなのだ
「職員室までだよ」
「手伝うよ」
「いや、いいよ。まだ着替えもしないといけないでしょ?時間無くなっちゃうから早く行きな」
「……うん、じゃあ、また後で」
「うん、バイバイ」
職員室へ向かう為に方向転換して歩き出そうとすると後ろからまた控えめに声を掛けられた
「あのさ、佐倉井」
「ん?」
「今日、放課後体育館の点検日で部活休みなんだけど…」
「陸上部は今日は早上がりだよ。それまで東峰が大丈夫なら一緒に帰ろうよ」
「お、おう、じゃあ…待ってる」
「ん、久しぶりに一緒に帰れるねー。楽しみ、じゃあ、また放課後にね!」
踵を返して職員室へ向かう足取りは自然と軽いものになっていた
東峰と帰れるなんて久しぶりだ!
部活も早上がりでホントに良かった
まぁ、部活が無ければもっと良かったんだけど一緒に帰れるだけで万々歳だ
ふふ、楽しみ!
提出用のノートを届け終えた後、締まりの無い表情で教室に戻ったらみっちゃんに気持ち悪いって言われました
…どうでもいいけどキモイって言われるよりも気持ち悪いって言われた方が何か傷付くよね
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