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私は、背が高い事が凄くコンプレックスだ
小学校の頃から背の順で並ぶと決まって一番後ろ
それは中学でも変わらずそのままだった
普通小学校で背が高い子って中学では成長期が終わって背の順ではどっちかというと前の方になるとかよくある話なのに私の成長は留まるところを知らないらしい

高校生になった今でも私は背が伸び続けている
もうこれは悪夢だとしか思えない
下手な男子よりも背が高いってどういうこと?
クラスの男子でも半分は私よりも低い
女子に見下ろされるなんて男子からしたら屈辱でしかないんじゃないだろうか

ちなみに私の身長は175cmだ
父は180センチ超で母も女性にしては高めの167cmだ
兄が1人いるけど、この前185cm超えたとか騒いでいた
ほんと私の身長あげたいくらいだよ
この身長のせいで私は今まで彼氏なんか出来たことないし、夏にヒールなんか履いたら180cm近くなる
こんなんじゃいつまで経っても彼氏なんか出来やしないだろう

いつの間にか姿勢も猫背になってしまったし、ヒールを履くことも諦めた
少しでも背が低く見えるようになりたかったからといって猫背はないよね
今じゃ癖が付いちゃって中々治らなくなってしまった

「はぁ…」
「なぁに、人の顔見てため息つくなんてひどくない?」
「あ、いや、そうじゃなくて!」
「またなんか悩んでるの?」

昼休み、友達とお弁当を食べながらついついため息を零してしまった
マミちゃんは私の中学からの友達で気兼ねなく接することが出来る数少ない友人だ
小柄でちょっとキリッとした釣り目が特徴の子
自分の言いたい事ははっきり言うタイプの子でよくオドオドしている私に喝を入れてくれる

「私、背が低くなりたい」
「またそれ?もう諦めなよ」
「でもさぁ…」
「背が高いって私からしたら羨ましいけどね」
「羨ましいもんじゃないよ、先生にはよく棚の上にある教材取ってくれとか頼まれるし、男子には巨人が来たとかコソコソ言われるし…」
「…それはアンタが俯き気味でノソノソ歩くからでしょ?背筋伸ばしてシャンとしてれば誰もそんな事言わないわよ」
「…ノソノソって」

もう効果音ですら可愛くない…
なに、ノソノソって熊ですか私は

「そもそも身長でしか判断出来ないような器の小さい男は所詮その程度の奴なのよ、そのうちいい男が現れるから気にしないでいいじゃない」
「そのうちって一体いつ?10年後?20年後??……そんなの私枯れちゃうよ」
「またそのネガティブ、もっとポジティブに考えなさい」
「……うん」

因みにマミちゃんには年上の彼氏さんがいる
確か3歳くらい上だったかな
考えも大人で落ち着いてるマミちゃんだからきっと彼氏さんとも上手くいってるんだろうなぁ
付き合ってもう結構経つんじゃないかな

「マミちゃんは今彼氏さんと上手くいってるの?」
「…なんで私の話になるの」
「偶には聞きたいなって」
「まぁまぁよ」
「もう付き合ってどれくらいだったっけ」
「…2年くらい、だったような」

凄いなぁ…そんなに長く続くなんて
この前クラスの子が話してるのをちらっと聞いたけどその子は2ヶ月程で別れてしまったと言っていた

「それって凄いことだよね」
「…どうかしら、やっぱり歳も学校も違うとそれなりにすれ違いはあるけど」
「そうなんだ」
「まぁ、私の場合は幼馴染みだから家も近いし浮気とかの心配はないけど」
「…うわき」

ほんとに大人の世界だ
恋すら実ったことの無い私にとっては別次元の話だ
…悲しい事に

初恋は小学校の頃の同級生の男の子だった
ちょっとヤンチャで、だけど女の子にも優しい子だった
だけど私は偶然聞いてしまったのだ

彼が私の事を女として見れないと話していたのを
自分よりも背が高くて(その時は男子よりも)握力も有る女子を女として見れないのは今思えば当然なのかもしれない

その頃からだ、私が身長を気にし始めたきっかけは

それからは何をするにも自信が持てなくなった
皆が私の事を悪く言っている様な気がして、人の視線から逃れる様に俯いて歩くようになった
前髪だって伸ばすようになったのもあの時がきっかけだったな…

あの時のことを思い出して自然と俯いていた私の視界に小さな手のひらが迫ってきた
細くて小さなその手はマミちゃんのものだった
マミちゃんは私の前髪を持ち上げ視界を遮っていたものを退かした

「まっ、マミちゃん?!」
「……あんた前髪上げなよ」
「わ、私に自ら笑いものになれと…??」
「はぁ…」
「溜息つかなくても…」
「あんたはいちいちネガティブ過ぎるのよ、誰もあんたの事なんか気に求めてないから」
「うわぁー、傷ついた、私の心は今マミちゃんの心無い言葉にグサリと突き刺さりました」
「あー、はいはい」

マミちゃんは私の言葉を軽く流しスマホに視線を向けた
…彼氏さんにメールかな

ちょっとだけ羨ましかった
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