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約束していた場所である校門の前にゆっくりと歩いていく

部活動を終えたらしい生徒達がちらほらと下校している様子が見えて、自分は帰宅部でいつも明るいうちに帰っていたからなんだかこの光景が新鮮だった

……私も部活をやっていたらこの時間帯に帰るのが普通だったんだろうなぁ

バスケ部やら陸上部……あれはどこの部活だろう、美術部かな?制服の裾が少し絵の具で汚れてる

男子バレー部はまだ終わっていないのかな
未だに誰1人男子バレー部の部員を見ていないし
…いや、私自身男子バレー部の全員の顔を知っているわけじゃないんだけどね

ボーッと生徒達が下校している姿を眺めていながら潔子ちゃんがやって来るのを待つ

「あれ?佐倉井じゃん」
「…ん?おー、内田君じゃないか」
「じゃないかって、反応薄いなぁ…こんな時間まで学校に残ってんの珍しいじゃん。居残り?」

くるりと振り返るとそこにいたのは人懐っこい笑みを浮かべる1人の男子生徒
残念ながら私に声を掛けてきたのはクラスメイトの内田君
彼は確かサッカー部だったはず
まぁ格好を見たら間違いないだろう
どうでもいい情報だと思うが彼と私は小学校からの腐れ縁だ

モブ中のモブである彼の紹介はここまでにして置いて私はまず彼の勘違い発言を撤回せねばならぬ

「はぁ?違いますぅ〜私成績一応良い方ですから。何処かの誰かさんと違って」
「それ俺のこと言ってんじゃねぇか、明らかに」
「あれぇ?私一言もそんなことを言ってないけどどこか心当たりでもあるのかなぁ?」
「くっそ腹立つなぁお前、んで?何でこんな時間まで居るんだよ」
「女の子には色々あるの」
「え?女の子?どこに」
「君の目の前にいますけど?」
「へぇ、佐倉井女子だったのか?」
「君ってホントーにデリカシーの欠片もない男だね!そんなんじゃいつまで経ったって彼女なんか出来ないぞ!」
「余計なお世話だっつーの!」
「はいはい、じゃあね内田君!私は今潔子ちゃんと待ち合わせなの!お邪魔虫は退散してくださーい」
「ちょっ、おい、押すなっての!」
「それじゃあ内田君また明日ねばいばーい」

息継ぎもせずに別れを告げ、グイグイと内田君の背中を押しさっさと退散させる
ぶつぶつと何か言っているみたいだけど私は無視を決め込んだ
何を言っても無駄だと理解したらしい内田君は渋々と帰っていった

あぁ、これでも私達はそこそこ仲のいい方だからね
これが私達の通常運転だから

ふん、と息を吐き出し彼の背中が小さくなるまで見送る
きっと奴は私が1人で帰ると言っていたら無理にでも送ってくれただろう
そういう人なのだ内田君という人物は

「仲いいんだね、内田と」
「うひゃぁ?!き、ききき潔子ちゃん?!?!いいいつからそこに?!」

いつの間にか私の後ろにいたらしく、突然話しかけられ必要以上にどもってしまった

「今さっき来たところ。ごめんね、遅くなって」
「ううん!気にしなくていいよ!」
「じゃあ、帰ろうか」
「っ…うん!」

なんか、なんか今のくだりカップルみたいじゃない?!

そんな妄想を打ち消し隣を歩く潔子ちゃんをちらりと見る
私は150cm台だから160cm以上ある潔子ちゃんを見上げることになる
背も高くて美人で優しくて頭も良くて、ほんと非の打ち所のない人
私って凄い人のこと好きになっちゃったんだなぁ…

私の視線に気が付いた潔子ちゃんがこっちを向いた

「莉津?どうかしたの?」
「へぇ?!あ、いや、あのっ……あ!そう、潔子ちゃんとこうして一緒に帰るの初めてだよね!」
「そういえばそうだね…なんか不思議な感じ」
「私帰宅部だからね」
「…莉津はどうして部活に入らなかったの?」
「うーん…なんて言うんだろう…」

自分がどうして部活に入らなかったのか
…興味惹かれるものが無かったからかな
ううん、そんなのじゃ無い
だって私は中学の頃は吹奏楽部に入っていたんだから
勿論、烏野高校にだって吹奏楽部はあった
だけど私は入部しなかった

改めて自分の中で考えてみると思っていたよりも心境は複雑だった

「部活にはあまりいい思い出が無いから、かな。私は中学の頃吹部に入ってたんだけど人間関係でちょっといざこざがあって…なんか面倒臭くなっちゃったの。だから高校では部活に入ろうなんて思わなかったの」
「…そう」
「今思うとそれがいい選択だったのかは分かんない。でも、自分が選んで決めた事だから後悔はしてない。こうして今、潔子ちゃんと一緒に帰れてるし!」
「…莉津ったら」

クスクスと笑う潔子ちゃんにドキンと胸が高鳴った
眉を少し下げて笑う様子は少し呆れを含んでいるけど、それでも私は嬉しかった
こうして潔子ちゃんと2人で会話をしながら帰る
なんとなくでこれまで過ごしてきたけど、今烏野高校に入学して本当に良かったって思う

「でも私莉津のそういうところ好きだよ」
「っ、…え、あ…ほんとー?潔子ちゃんにそう言ってもらえるとなんか嬉しいなぁ」

今度は違う意味でドキンとした
一瞬反応が鈍くなってしまったのは仕方ないと思う
だって、潔子ちゃんがそう言ってくれるなんて思ってもみなかったんだから
ただ、ここで間違えちゃいけない事は私の【好き】と潔子ちゃんの【好き】は違うという事だ
彼女はあくまでも友人として、好意を持ってくれているんだ

「…私も、潔子ちゃんのこと好きだよ」
「え?」
「頭が良くて、要領も良い、美人で優しくて…私潔子ちゃんと友達になれて本当に嬉しい」

貴女と私の【好き】の意味は違うけど、好きだって言ってもらえるくらいには仲良くなれたって事だもん
…少し悲しいけどそれ以上に嬉しさが勝る

「…煽てたって何も出ないよ」
「煽ててないよ、本心!私、男に生まれてきたら絶対に潔子ちゃんと付き合いたいって思うもん!」
「……」
「女から見ても魅力的だから男子たちが騒ぐのも仕方ないなっていつも思ってるんだよ?」
「…莉津だって男子にモテてるじゃない」

潔子ちゃんの言葉に私はぽかんと口を開けて固まってしまった

ん?
今潔子ちゃんはなんて言った?
私の空耳かな、それとも聞き間違い??

「えーっと、ごめん、潔子ちゃん…今なんて??」
「…だから、莉津は男子にモテてるって」
「あはは!そんなわけないじゃん!私高校に入って告白されたこと無いし、そもそも女として見られてないよ!」

さっきの内田君がいい例だ
女の子扱いなんてされたこと無いし
潔子ちゃんは一体どこをどう見たらそう思ったんだろうか

しかし当の本人である潔子ちゃんは納得していない様だった
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