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「そんな事ねぇよ」
「え?」
「別にデカイ弁当だからって引いたりしねぇよ。むしろこっちの方が見てて気持ちいい」
「…そう?」
「すげー弁当旨そうだし、自分で作ったのか?」
「う、うん…まぁ料理作るしか取り柄ないし」
「何でそんな卑屈になってんの、料理上手いとか充分すげえ事だろ」
「そ、そう…かな?えへへ…あ!黒尾くん何か食べたいのある?この唐揚げとか自信作なの!」
「良いのか?」
「うん!食べてみて!」

佐倉井は俺の弁当の中に唐揚げを入れた
綺麗な色で揚がっていて旨そうだ
口に入れると味付けは家とは違って、しっかりと味が付いていて手間がかかっているのがよく分かる

「…うまい」
「ほんと?良かったぁ」
「もうまじで佐倉井の飯って旨いよな…うちの母ちゃんよりも絶対上手い」
「そ、それは言い過ぎだよ」
「いや、まじだって……あ」
「ん?どうかしたの?」

俺はもう1つ持って来ていたものを思い出し、それを佐倉井に差し出した

「これ、昨日のお礼」
「え?!ほ、ほんとに持ってきたの!?そんなの良かったのに…」
「つーか佐倉井、お前ホントは昨日食ってないだろ」
「ぅえ!?そ、そんな事ないよ!ちゃんと食べた!」
「丁度俺が出た後入れ違いだったんだよ、ほかの部員と…その時偶然聞いた」

俺がそう言うと佐倉井は目線を泳がせた

「あー、えっと、ごめんね。嘘ついて…でもどうしても食べて欲しかったから」
「…それって俺だから?」
「え!?あ、いや…えっと…」

顔を赤くし慌てる姿は、すごく可愛いと思った

「そんな顔してると自惚れるぞ」
「っえ?」
「そういう男が多いってこと」
「あ、そ、そうだよね!あ、あはは」

眉を下げて無理に笑う佐倉井
なんで、そんな顔するんだよ
まじで自惚れるぞ

「なぁ、佐倉井」
「な、何かな?」
「俺さ、多分お前のこと気になってるんだと思う」
「た、多分?」
「今まで本気で好きになった事って無かったから正直戸惑ってるって言うか、どうしたらいいか分かんねぇ」

自分の思っている事を素直に伝える
長い沈黙が続きポツリと佐倉井が呟いた

「わ、私は…黒尾くんの事…見てたよ」
「え?」
「……だって、好きな人のことは目で追っちゃうものでしょう?だから昨日黒尾くんが調理室に来た時はすごく驚いたのと嬉しいのでいっぱいだったの」
「全然気が付かなかった」

そんな素振り全く見せなかったじゃねぇか

「だって、必死だったもん…あんまり話したこと無いのに黒尾くんの事知ってるなんて気持ち悪がられるでしょ?今日も、こうして一緒にお昼過ごしてるのなんて夢見たいだもん。私みたいなデブでブスと一緒にいるなんてしったら皆怒っちゃいそうだなぁ」
「お前はデブでもねぇしブスじゃねえよ」
「またまたー自分の事くらいちゃんと理解してるよ」
「佐倉井は可愛いと思う、すごく」

そう言うと佐倉井は顔を真っ赤にして俯いた
そういう所とか、いいと思う

「モテる黒尾くんはやっぱ違うね…そう言って色んな女の子にも言ってるんでしょ?」
「言ってねぇ…佐倉井だけ」
「く、黒尾くん、どうしちゃったの」
「…正直さ、意識したのはホントに昨日なんだよ。だから佐倉井の事全然知らねぇ」
「うん」
「でも、知りたいと思ったんだ…」
「私のことを…?」
「あぁ…きっかけは料理だったけどさ」
「ふふ、」
「何笑ってんだよ」
「…私、料理が得意だからね、実は狙ってたって言ったら怒る?」

佐倉井の言葉に俺は目を丸くする
じゃあ俺はまんまと佐倉井の策略にハマったわけだ

「佐倉井、お前意外と策略家だな」
「ふふ、でもね、これはあくまできっかけになったら良いなって思ってただけなの。黒尾くんと話すきっかけに」
「…じゃあ話すきっかけになって良かったな」
「…うん、嬉しいよ」

本当に嬉しそうに笑うから文句も言えない…というか言うつもりもない

「俺と、友達からはじめませんか」
「勿論、喜んで!」

俺はこの料理上手のクラスメイトにまんまと胃袋を掴まれたのだった

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