×
「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -




昼休み__________

俺は弁当と小さな紙袋を持って1人で校内を彷徨いていた

いつも昼飯を食べている夜久は委員会があるとかで弁当を持って会議室へ行ってしまい、それならば海たちと食べようと教室へ向かうと担任に呼ばれたらしく不在

仕方がなく1人で食べることになったが自分の教室に戻って食べるのは何となく気が引けてどこか静かな場所がないか探しているがなかなかいい場所が見当たらない

そこで思いついたのがついこの間初めて訪れた調理室だった
確かあそこの近くに非常階段があったはず…
あそこなら人通りも少ないし静かに食べれそうだ

この前と同じように外の方から調理室へと向かう
何気なく中の様子を伺うとそこには佐倉井の姿があった

なんで昼休みに調理室へ…?

何か書いている様だがこの距離では何を書いているのかまでは分からない

…取り敢えずさっさと昼飯食うか
止めていた足を踏み出すと思っていた以上に大きな音が響いた

その音に気がついた佐倉井がこっちを向いた

それを見て思わず紙袋を持っていた手に力が入る


「黒尾くん、こんな所でどうしたの?」
「あー……あそこの非常階段のところで飯くおうと思って」
「え?あんな所で?…夜久くんといつも一緒に食べてたんじゃ…」
「あいつ今日委員会でいないんだよ。他の奴らも見当たらねぇから、静かな場所で偶には食べようかと思ってさ」
「そうだったんだ…じゃあ黒尾くんさえ良ければ調理室で食べない?日陰だと結構冷えるし」
「良いのか?…何か取り組み中だったんじゃねぇの?」
「あぁ、あれは私用だよ」
「ふぅん…じゃあ、お邪魔シマス」
「どうぞー」

私用が何なのか気になるところではあるがまともに話したのが昨日という事もあり深く聞き出せない
というよりも佐倉井って意外と周りのこと見てんだな

校舎内に入り扉を開けて調理室へ入る
ここへ入るのは昨日を入れて2回目だというのに酷く落ち着いた
何故そんな風に思うのか自分でもよく分からなかった

「こっちにどうぞ、ここ日当たりもいいの」

ポンポンと佐倉井は自分が座っている向かいの席を叩いた
言葉の通りそこは陽の光が差し込んでいて暖かそうだった
向かいの席へ座った俺を見て佐倉井はクスクスと笑った

「…なに」
「ううん、ただ黒尾くんがここにいるのが何か面白いなって」
「面白い?」
「うん、だって黒尾くんと調理室ってミスマッチな感じ」

そう言ってまたクスクスと笑い出す佐倉井
何となく居心地が悪くなって持って来ていた弁当を開く
中を開けるといつもと同じ様なおかず達が顔を覗かせていた
そういや母ちゃんが今日の玉子焼き少し焦がしたって言ってたな
言ってた通り玉子焼きは何時もより焦げ目が目立っていた
パクリと一口で食べると見た目ほど味は変わらなかった

顔を上げると佐倉井がこっちを見ていた

「黒尾くんのお家のお弁当は愛情がたっぷりだねぇ」
「…そうか?」
「うん、だってお弁当のおかずに冷凍食品入ってないし、色合いもすごく綺麗」

そう言われて弁当に視線を落とす
まあ、確かに家はあんまり冷食使わないけども
確か母ちゃんが冷食使うのあんまり好きじゃないとか言ってたな
色合いはともかく結構昨日の残り物とかも多いけど

「そういや佐倉井はもう昼食い終わったんか?」
「まだなの、丁度一段落したから今から食べようかな」

そう言って佐倉井は自分の手提げ鞄の中から弁当を取り出した
ピンク色の2弾重ね弁当でクラスの女子よりも大きめだ
まぁ無理にあんな小さな弁当食うよりこっちの方がいいと思うけど

「佐倉井はいつも此処で弁当食べてんの?」

俺は教室で食べてるのを見かけているのに、佐倉井に聞いてみた

「ん?んー、たまに…皆すっごく小さいお弁当でね…なんかダイエットしてるーとか言って」

パカリと開けた弁当は色鮮やかでどれも美味しそうだった

「でも私そういうのあんまり良くないなって思うから見るとつい指摘しちゃうの。でも彼女たちは彼女達なりの思いがあって努力してるでしょ?それを否定するのが忍びなくって」
「だからここで食べてるって?」
「そう。だってダイエットしてる人の目の前で大きな弁当頬張ってるのもなんかさー」
「まぁ気持ちは分からなくもないけども…女子って面倒臭いな」
「だから今日は黒尾くんと一緒に食べれて嬉しいよ…あ、こんなに食べる女子に引いてる?」

ふふふ、と笑う佐倉井の笑顔はさっきとは違うなんだか違和感のある笑顔だった


prev next