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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -




次の日、朝練を終えて自分の教室へと入ると既に半分以上クラスメイトが登校していた

佐倉井はいるかと教室内を見回すが、姿は見えない

あいつの席は確か廊下側から2番目の列の後だったはず
確認してみると一応鞄は置いてあるものの持ち主は無い

「…どこ行ったんだ?」
「誰か探してるの??」
「っうぉ!?」

突然後ろから話かけられ思わず声を上げる
ゆっくりと後ろを振り向くと、そこにいたのはさっきまで自分が探していた人物だった

「おはよう、黒尾くん」
「おお…あ、いや…気にすんな、それよりお前今日当番かなんか?」

佐倉井の手には束になったプリントが結構抱えられていた

「私今日日直なんだよねぇ…SHRの時に使うプリントを取りに来いって先生に言われて取りに行ってたところ」
「ふぅん…手伝おうか?配るの」

俺がそう言うと佐倉井は目を丸くした

「黒尾くんがそんな事言うなんて…」
「なんだよ、その顔は」
「いや、なんか意外だなーって思って」
「はぁ?」
「だって黒尾くんって手伝おうかって言うようなタイプに見えなかったから、なんか意外で…」
「失礼な奴だな、俺はいつも優しいぞ」
「ふふ、そうなの?…じゃあその優しい黒尾くんには半分配るの手伝ってもらおうかな」

佐倉井はそう言ってクスクスと笑って持っていたプリントの半分を俺に差し出した

「じゃあ私はあっちから配るから黒尾くんは向こうから配ってくれる?」
「りょーかい」

半分しかない量のプリントはあっという間に配り終えた

「ありがとう黒尾くん、おかげで早く終わったよ」
「いや、こんくらい別にいいって」
「…そう?でも本当に助かったから、ありがとう」

最後に一言礼を言って自分の席へと戻って行った
もう少し話したかった様な…いやいや、何考えてんだよ俺は

小さな溜息を1つ零した自分の席に戻ると何故かニヤニヤした夜久がこっちを見ていた

「…なんだよその顔」
「いやー…別にぃ」
「…別にって顔じゃねぇだろうが」
「お前がああいう風に手伝うの初めてだろ」
「はぁ?…そうだったか?」
「…無意識か」

ボソリと呟いた夜久の言葉をそのまま流し席に座った

「知ってたか?」
「何が?」
「佐倉井って結構モテるんだぜ」
「…何でそんなこと俺に言うんだよ」
「いや?何となく」
「意味わかんねぇ…」

まぁ確かにあれだけ料理も上手くて愛想が良ければモテないことはないだろうけど
そう思いクラスメイトと雑談をしている佐倉井をチラリと横目で見る

色も白いし、女らしいっちゃあ女らしいか
よく笑うし、気遣いも出来てる

どちらかと言うと母親っぽいような気がするけど…

俺と夜久が話をしているすぐ側で話をしている男子達の声が不意に聞こえてきた

「…佐倉井ってさ、なんかいいよな」

なに…?

「お前あんな感じのがタイプなのか?」

あんなってなんだよ

「いや、顔とかはタイプじゃねえけどさ、この前調理室の前を偶然通りかかったんだけどすっげぇ料理旨そうだったんだぜ?」

旨そうじゃなくて旨いけどな

「料理につられたのかよ、食い意地はってんなぁ。俺だったら可愛い子の方がいいな、ほら佐倉井といつも一緒にいる高橋とかさー」

佐倉井がブスだって言いたいのかお前は失礼だな

「高橋ー?いやぁ、やっぱ俺は佐倉井かな…いつも笑ってるし優しいし話しかけやすいじゃん?」

こいつ、意外と見てんな…

「まぁ確かに触り心地良さそうだな、佐倉井」

はぁ?!

思わずガタリと席を立とうとするのを必死で堪える

「お前はそんな事ばっか考えてるからモテねェんだよ」
「はぁ?お前だって彼女いねぇだろうがよ!」
「あーはいはい、そうですねー」
「なんだよその投げやりな態度は!」
「だって俺彼女いた事あるし、お前と違って」
「うっわ!腹立つわーその顔」

話題がそれたことにひと安心しするとまだこっちを向いて座っていた夜久がまたニヤニヤしていた

「…なんだよ」
「ほらな?俺の言った通りだっただろ?」
「だから、それがどうしたんだよ」
「へぇ、あれを聞いてもまだしらばっくれる気か」
「何が言いたいんだよ、夜久」
「だからさ、」


早くしないと佐倉井誰かに取られるぞ?



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