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俺の言葉を聞いてキョトンとした佐倉井はふふふ、と笑った

「黒尾くん、知ってた?」
「…何が」
「料理って作ったのを食べるだけじゃないの」
「…ふーん」
「作ったのを食べてもらうのも一つの楽しみなんだよ」
「佐倉井の分はあんの?」
「ん?私の分はあるから気にせず食べてよ。今日ひとり休みなの」

それを聞いて俺は料理に手を付けた

味噌汁も丁度いい塩加減だし、ぶりなんかすげえ旨い

「…うま」
「ふふふー」

ボソリと呟いた俺に佐倉井は嬉しそうに笑う

「何か、食いづらいんだけど」
「あ、ごめんね、嬉しくてつい」
「まぁ、良いけどさ…佐倉井は何作ったんだ?」
「私?私が作ったのはねーぶりの照り焼き!どう?美味しい?」
「マジかよ」

うっわ…
めっちゃ旨いんですけど…

「どうどう?」
「いや、めっちゃ旨いっす」
「うふふーそう?嬉しいなぁ、黒尾くんのお墨付きだね」

表情筋緩みっぱなしの佐倉井に不覚にもドキリとした

「ほら、どんどんお食べ」

促され俺はパクパクと食べ始めた
どれも美味かったけどやっぱりぶりの照り焼きが1番美味かった

「ごちそーさま」
「お粗末さまでした!いやぁ、良い食べっぷりで見ていて気持ちよかったよ!」
「…これは褒められてる?」
「もっちろん…あ、そうだ」

何かを思い出した佐倉井は突然立ち上がり鞄の中をゴソゴソと漁り出した
そして取り出したのはお菓子のパーティパック

「これ、バレー部の皆にもあげてよ」
「…は?でも」
「お腹の足しにはならないかもしれないけど、何も無いよりいいでしょ?黒尾くんだけなんて他のみんなが可哀相だし」
「…じゃあ、貰っとく。また今度お礼するわ」
「え、いいよー別に!そんなつもりであげるわけじゃないし」
「いや、ここまでしてもらって申し訳ないし俺の気がすまねぇから」
「んー…じゃあ、うん。楽しみにしてる」
「じゃあ、また明日な」
「うん、バイバイ」

手を振る佐倉井に軽く手を挙げ応える
ガラガラと調理室から出た後、前から数人の女子が歩いてきた
多分料理研究部の部員だろうと思い自分が来た道を振り返ると予想通り彼女たちは調理室のドアを開け中に入った

「あー!莉津先に食べてる!」
「ごめんごめん、だってみんな遅いから待ち切れなくって!」
「もーしょうがないなぁ、莉津は」
「すっごく美味しかったよ、みんなの分も準備するから早く座って座って!」
「あ、これ莉津にお土産!」
「あ!これ期間限定のシュークリームじゃん!貰っていいの!?」
「いいよー!だって莉津の作るご飯お母さんよりも美味しいんだもん!」
「えへへ、ありがとう」

聞こえてきた話の内容に俺は驚愕した
おいおい、1人休みだったんじゃないのかよ

「うわー…俺ホント馬鹿じゃん」

多分これもあれ食った後皆で食べようとしてたんだろうな

手元にあるお菓子のパーティパックを見てため息を零した

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「おー、黒尾、遅かったな」

体育館へ戻ってきた俺にいち早く気がついた夜久がやって来た

「ん?どうした、何か元気ねぇな…担任に説教でもされたか?」
「いや、そういうわけじゃねぇよ…ただ」
「…ただ?」
「情ねぇ」
「???」

首をかしげる夜久
いや、まぁ当たり前だと思うけどどうにも理由を話す気分にもなれない

「あー!!黒尾さん、それどーしたんですか!?」

俺の手元にある例の物を見てリエーフが声を上げる

「…差し入れ」
「へぇ!流石黒尾さんっすね!モテモテじゃないっすか!」
「うるせー」

そんなんじゃねえっつーの

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