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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -




「あの、莉津さん」
「ん?」
「いえ、何にもないです」
「…久しぶりに話でもする?」
「は、はい!」


本当は練習をした方が良いんだろうけど、今は莉津さんと話をしたい気分だった

俺達は小陰になっている場所に座った
横顔はやっぱりあの時と同じだ


「…しょうは見詰めるの好きなの?」
「へ!?」
「初めてあった時もそうだった」
「あ、いや、えっと…すみません」
「別に謝って欲しいわけじゃないけど」
「俺、莉津さんの横顔好きなんです」
「…横顔だけ?」
「へ?!」


こっちを向いて真剣な表情をする莉津さん
心臓がバクバクと忙しなく動いた


「………冗談よ、冗談」
「じょ、冗談…」
「…顔、赤い…本気にした?」
「え、いや…えっと…その、すみません」
「さっきからしょう、謝ってばっかり」
「…う、」


そんなつもりは全然無かったけど、思い返してみると確かに謝ってばっかりだ


「しょうは、あの頃と変わらないね」
「え、」
「話してて裏表がない人といるのは気を遣わなくていいから好きなの」
「そう、ですか」
「うん、まぁ男子ともそんなに話しないけど」
「え、でもさっき菅原さんと」
「あぁ…菅原は今日日直だったから。たまたま先生に頼まれたからってだけ、業務連絡よ」
「菅原さん、すごい良い人ですよ?」
「うーん…菅原は、なんていうか…悪い人じゃ無いとは思うけど」
「…けど?」
「女子に絡まれたらめんどそう」

……?
女同士ってやっぱりよく分からない


「やっぱり、男に生まれた方が良かったな」
「え?」
「そしたら……何でもない」
「でも、こうしてまた会えました」
「え」
「また、莉津さんと会えたから、良かったです」

莉津さんの言葉の続きは気になったけど、でも俺は今自分が思っていることを素直に伝えた

「俺、莉津さんが中学卒業した後…どうしてるかなって何回も思ってました。俺達、毎日のように練習はして来たけどお互いのこと何も話してなかったなって」
「……うん」
「あの時莉津さんが本当の仲間になれないのが残念だって言ったじゃないですか」
「言ったね」
「なんて言うか、寂しかったです」

そうだ、俺は寂しかったんだ
あんなに一緒にいたのにどこか俺達の関係を線引きしているみたいで
どこと無く距離を置かれている気がしたんだ

いつの間にか俯いていた顔を上げ莉津さんの方を向いた

「しょう」

莉津さんは俺の名前を呼んで頭を撫でた

「え、莉津さん??」
「はは、ふわふわだ」
「えっと、あの…」

戸惑う俺を他所に莉津さんは撫で続ける
数分後にやっと頭から手を離した
そしてあの真っ黒な瞳が俺の姿を写した

「よし、」
「…?」

何がよし、なのか分からかいけど…

「しょうがこれから寂しくないように、はい」
「へ?」

莉津さんは突然ケータイをブレザーのポケットから出した

「あ…でも部活に入部したらそんなことないか」
「ほ!欲しい!!欲しいです!」
「…ふ、必死過ぎ」

赤外線で莉津さんの名前が新しくアドレス帳に追加された

「ふ、ふふふ」
「…ニヤけてるよ、顔」
「ほぁ!?」
「そんなに嬉しかったの?」
「も、勿論!」
「ふぅん…そう」
「俺、莉津さんのこと好きですから!」
「へ??」
「え!!??あ、えぇ?!」

咄嗟に出た言葉にお互いに目を丸くした
初めて見る莉津さんの表情にドキリと胸が高鳴った

「いや、違っ!違くないけど!違います!」
「どっち」
「いやえっと!そのっ!突然出たというか、無意識だったと言うか!」
「無意識…」
「あぁ!いや、ほんと、その気にしないで下さい!」
「うーん…無理」
「なっ!?」
「だって無意識に出たってことは本音でしょ?」
「え、」
「いいよ、なんなら付き合っちゃう?」
「へ?!」
「うん、しょうとなら毎日が飽きなくて楽しそうだ」
「え、あの!」
「あ、いやなら全然いいから」
「そんな!是非っ!…っは!」

トントン拍子で話が進んでいく
すっかり彼女の調子に流されている

けど、自覚したばっかりだけど俺は莉津さんの事が好きだ

「うん、こちらこそよろしく」

そう言って笑う莉津さんの笑顔はやっぱりあの頃から変わらない

「しょう、」
「はい?!」
「…焦りすぎ、まぁ…そんなに構えなくて大丈夫だよ。焦らずゆっくり行こうよ」
「…莉津さん?」
「時間はまだまだいくらでもある。今は目の前の目標を達成しよう」
「は、はい」
「練習しようか、残り時間少ないけどさ」
「はいっ!」

立ち上がった莉津さんは未だに座っている俺に手を差し出した
俺はその手をとって立ち上がった

付き合うってどんな感じなのか良くわからないけど
でも、こういう関係が俺達らしいような気がした

俺よりも少しだけ目線が高い莉津さん
いつか俺はそれを越したい


「しょう、アタシやっぱしょうの事好きだ」
「ふぇ!?」


…俺莉津さんに勝てる気がしない

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