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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -




莉津さんはあっという間に卒業してしまった
1年なんて本当にすぐだった

莉津さんとは練習をたくさんしたけど、連絡先とかは全然聞いていなかった
だから莉津さんがどこに進学したのかも知らない

…というより、俺は莉津さんの名前と学年しか知らなかったんだ
卒業式で初めてクラスを知ったし…

それはお互いに言えることではあった
多分莉津さんは俺のクラスを知らなかっただろう
彼女もそれを俺に聞くことはなかった

『本当の仲間』

今でもあの時言われた言葉は頭の中に残っている
そうだ、俺は莉津さんが卒業してから女子バレー部の人たちに混ざって練習させてもらったり
ママさんバレーの人たちとやったり
友達に無理を言って付き合ってもらって

色んな人たちに協力してもらったけど、それは仲間だからとかそういうのでは無いんだ

確かに凄く有難かったし、助かったけれど…


それから2年が経って俺も莉津さんと同じように卒業した
初めて出た試合では負けてしまったけどそれでも俺は中学の間に部員が集まって、試合に参加出来て良かった

欲をいうなら勝ちたかったけど…


進路も確定して俺は烏野高校に進学した
小さな巨人になる為にバレー部に入って影山に勝つ

……そう思っていたのに、影山も烏野でそこから教頭のズラを吹き飛ばしてキャプテンを怒らせて入部は保留

挙句の果てには勝ちに必要な奴とは思えない、と言われる始末だ

悔しい
俺だって無駄に3年間を過ごしてきたわけじゃないのに
ああやって何も知らないのに言われるのは嫌だった

だから俺は出来るだけ多く練習をしてアイツにトスを上げてもらうんだ

菅原さんと一緒に昼休みに練習をしながら中学の頃を思い出した

こうしてよく、2人で練習したな…
莉津さんは何処にいるんだろうか
…楽しかったな


「…日向?」
「っうぁ!す、すみません!」

やばっ!
折角菅原さんからアドバイスもらってんのに何ぼーっとしてるんだ、俺!

「んや、良いけどさ…どうかしたか?」
「あ、いえ…ちょっと中学の頃を思い出して…」
「中学?」
「はい…昔もこうして2人で練習した事があるんです」
「へぇ、そうなんだ…その人はバレー部じゃなかったんだ」
「うーん…女の人だったし、多分その人帰宅部だったんじゃないかなぁ」


殆ど毎日練習に付き合ってくれてたし
放課後もしてたし、部活はしてないはず
憶測だから断定は出来ないけど


「え、女子だったの!?」
「え?あ、はい」
「日向、女子に免疫無さそうだから…なんか以外」
「いや、まぁ…確かに女の人は苦手ですけど、流石にずっと付き合って貰ってたら馴れます」
「まぁ、それもそっか」


菅原さんは納得したようにうんうん、と数回頷いた

それからレシーブを再開しようとボールを上げた時だった__________




「菅原」



ずっと聞きたいと思っていた懐かしい声が聞こえた



上げたボールが頭の上に落ちてコロコロと転がっていった

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