×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -




そのまま暫くお互いを抱きしめ合いゆっくりと身体を離す
そして自然な流れで触れるだけの口付けをした

「……莉津」
「繋心、もう1回」

そう言って今度は莉津の方から重ねてきた柔らかな唇
何度も、何度も啄むようにキスをする
まるで今まで離れていた分を補うかのように

「…元気にしてた?」

唇を離し至近距離で聞いてくる莉津
相変わらずデカイ目は俺を真っ直ぐに見つめている

「まぁまぁだな」
「ふふ、なぁに、それ」

顔を離して元の場所に戻って座ると隣をポンポンと数回叩いた
隣に来い、という事か…

指定された場所に腰を下ろし何となく隣にいる莉津を見詰める

久しぶりに会った自分の彼女の髪の毛は最後に会った時と比べて随分と長くなっていた
鎖骨辺りまでしか無かった髪は今では胸の下辺りまで伸びている
手を伸ばし触れてみると真っ直ぐな癖のない髪の毛はサラサラと俺の指の間を通って元の位置に戻った

「髪、伸びたな」
「そうかな…似合う?」
「まぁまぁ」
「さっきからそればっかり、見ないうちにどんどん綺麗になっていくな、くらい言えばいいのに」
「俺が言うと思うか?」
「全く」

そう言ってまた莉津は笑った
コイツは昔からよく笑うやつだった
口元に手を当ててクスクスと笑うんだ

「なぁ、莉津」
「ん?」
「こっちに帰ってきたんだよな?」
「うん、もうどこにも行かないよ」
「…そうか」
「……安心した?」

俺はその言葉に返事をしなかった
返事をしなくても莉津はわかっている
だから何となくコイツの思い通りになるのが癪だった

「これからはずっと一緒にいるから浮気出来ないね」
「したことねぇだろうが」
「離れてる間に良いなーって思う人居なかったの?」
「お前はいたのか?」
「まさか、いるわけないじゃん」
「俺も同じだ」
「そっかそっか、ふふ…嬉しい」

少し頬を赤くさせ口元を隠すその姿がどうしようも無く愛おしい
俺は莉津を引き寄せ再び抱き締めた
この暖かい温もりがないとどうにも落ち着かないのだ

「……なぁ」
「…ん」
「………結婚、するか」
「……………うん」

胸に顔を押し付けている部分がじんわりと湿ってきた
コイツが帰ってきたら絶対に言おうと思ってた事だった
莉津が隣にいて、今俺の腕の中にいる
それが日常になる事を何よりも望んでいるのは俺だ

「繋心、私毎日味噌汁作るね」
「…おう」
「毎日いってらっしゃいとおかえりもお見送りする」
「おう」
「喧嘩しても直ぐに仲直りしようね」
「おう」
「あと、今みたいに偶にはぎゅってして欲しい」
「おう」
「2人で幸せになろうね」
「…おう」

幸せにしてね、と言わない所がなんとも莉津らしい

顔を上げて俺を見上げる莉津
その瞳は薄らと涙が滲んでいて表情も少しぎこちない
その表情もすべてが愛おしい
こんなに俺が惚れているなんて莉津はきっと思ってもいないだろう

でも、それでいいと思う
時間をかけてゆっくりと伝えていければ
俺達にはまだまだ沢山の時間があるんだから

prev next