×
「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -




『坂ノ下商店』

高校時代はいつも帰りに寄っていたこの店に彼は居るはずだ

彼のお婆さんに代わって今は彼が手伝いをしているって言ってたから
扉に手を掛けてゆっくりと開ける

カラカラと音を立てて開く扉
開けた先には昔と変わらない風景

平日の日中という事もあって学生の姿は見えない

そっと音を立てずに中へ足を踏み入れる
店内を見回すけど今は閑散としていて誰も居ないみたいだ
繋心はいないのかな?
でもお店は開いていたし、いない訳じゃない…よね

タイミングが悪かったかな…

ふとカウンターの方に目を向けるとそこにはお目当ての人物がいた

足音を立てずにゆっくりと近付く

「全く…店番がこんな無防備に眠ってるなんて信じられない」

彼、繋心はカウンターのイスに座りながら眠っていた
腕を組んで、眉間にシワを寄せながら…

寝てる時までそんな顔してたらシワが取れなくなっておじいさんみたいになっちゃうぞ

軽く眉間を突っついてみるが起きる気配が無い

「…おーい、愛しの彼女が帰ってきたぞー」
「……」
「起きない、か…まぁ、いいや」

私は自分の肩に掛けていた大きめのストールを彼に掛けた
暖かくなってきたといって油断すると風邪を引いてしまう

…さて、私は奥の部屋を借りて繋心が起きるのを気長に待っとくとしようか

「…ふふ」

起きた時の反応が楽しみで今から待ち遠しい
繋心は凄くからかいやすいから…

あぁ、早く起きてくれないかな

私、貴方に話したいことが沢山あるんだよ

prev next