私には好きな人がいる
だけど、その人には彼女がいる
1つ下の学年で学校でも背が高くて美人だと噂の子だ
まぁ、私みたいな何の特徴もない人間には関わる事さえ出来ないような人だ
しかも噂によるとあの清水さんと幼馴染みだと言っていた
…なんだろう、ホント住む世界が違うなって思った
美人な人の周りには美人が集まるのだろうか…
「…はぁ」
無意識のうちにため息を零してしまった
廊下ですれ違った人にどうかしたのかと見られたが、私にはそんな事さえ気にならなかった
あの人は彼女のそばにいる時、クラスとは違う表情をしていた
初めてそれを見た時 あ、やっぱり無理だって思った
あれは彼女だからこそ、あんな顔をさせることが出来るんだって
その隣は私じゃ無いんだって思い知らされた
教室に彼女が来たことが数回あったけど、どちらかと言うと彼女の方があの人のことを好きなんだって思ってた
だけど、違った
彼女は気がついてないかもしれないしれないけどあの人の方が彼女の事が好きなんだって分かった
それは私があの人をずっと見てきたからだと思う
本当に愛おしそうに見ているのだ
大切にしているって分かるんだ
それを見ているとやっぱり胸が痛むけど、それと同じくらい羨ましいなって思った
自販機の前まで来て何か飲み物を買おうと小銭入れから100円玉を取り出し入れようとしたら手元からポロりと落ちそうになった
咄嗟のことに機転が利かず落ちていく100円玉を呆然と見つめていた時白くて長い手がそれを阻止した
「っと!セーフ!!っていうかナイスキャッチ??」
「っ、」
声の主を認識して私は節句した
だってそれは今の今まで考えていた人物だったのだから
「あ、ありが…とう」
「いえいえ!10円玉ならまだしも100円玉はすっごく損した気分になりますからねー」
「う、うん、そうだね」
前屈みになっていた姿勢を正すと私よりもずっと高いところに彼女はいた
色白で長い手足、スラッとした鼻筋に薄い唇
瞳の色は人工的な色をしていてカラーコンタクトでも入れているのだろうか
自分とは違う存在であるこの子の前にいるだけで何だか恐れ多く感じてしまう
「あ、因みに私のオススメはこの自販機だけしか置いてない抹茶オレです!もし決まっていなかったら是非試しに飲んでみて下さい…って先輩ですから飲んだことありますよね」
あはは、と苦笑いを浮かべた彼女に私は首を降る
「飲んだこと、無いから…貴女のオススメ飲んでみるね」
「ホントですか?!うわぁ、嬉しいです!あ、私2年の天野遥音って言います!また、何処かでお会いしたら感想よろしくお願いしますね」
「あ、うん」
「あの、先輩のお名前は…」
「えっと3年4組の高橋宇理といいます」
「あ、じゃあ孝支先輩と同じクラスですね!!」
「えっ、あ、う、うん」
「そうなんですか、じゃあ宇理先輩とはまたお話出来そうですね!」
「そう、だね」
また、なんてあるのだろうか
彼女は次に会うときは私の事なんて忘れてるんじゃないだろうか
そんな思いをしながらも返事を返した私
天野、遥音ちゃんかぁ
可愛い名前だな
「じゃあ、私はこれで!」
「うん、また…ね、遥音ちゃん」
「!、はい!」
ブンブンと手を振りながら去っていく彼女を見送った後
自販機に100円玉を入れオススメだと言っていた抹茶オレのボタンを押した
冷たい状態のそれにストローを刺し口をつけつる
初めて飲んたその味はちょっぴり苦味があってでもミルクの甘さがあって
今の私の気持ちを表している様だった
その後、私と遥音ちゃんが軽口を叩けるようになるくらい仲良くなることになるのはまだ先の話だ
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