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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -

潔子side

今日は部活が休みで久しぶりに遥音の家で遊ぶ事になった
初めて出会った頃はこの近所に住んでいたが私が中学校に上がる時に家を建てた為引っ越したのだ

最近めっきり行かなくなった理由は遥音の家よりも学校から近い私の家に来ることの方が多くなったからだ

インターホンを鳴らし家の住人が玄関を開けるのを待つ
数十秒もするとがチャリと鍵が開く音がしてドアが開いた

「きよちゃん、いらっしゃい!」
「これ、お母さんから…」

玄関から出てきたのは学校とは違う家の中でしか見られない金髪、碧眼
外の光でキラキラと反射していてとても綺麗だ

「おばさんは?」
「あぁ、お母さんは取材旅行に行ってるから居ないよ」
「そう」

遥音は私が持ってきた紙袋を受け取り家へと招いた

「あ、私の部屋に行く?それともリビング?どっちでもいいけど」
「うーん、どうしようか」
「じゃあテレビあるしリビングでいい?」
「うん」

リビングへ向かい大きめのソファーに腰掛ける
そこでふと目に入ったのは写真がたくさん貼られてるコルクボード
その中の1枚の写真に目が行く
そこにはまだ幼い私たちの写真があった


私が初めて遥音と会ったのは私が幼稚園に入ったばかりの頃

私が当時住んでいたアパートの向かいに新しく建った家、そこが遥音の家だった

その頃、幼稚園から帰ってきた私は近所の公園に遊びに行くのが日課で
そこの小さな公園で 私達は出会った

父親らしき人に連れられて公園までやってきた金髪碧眼の女の子はこのこじんまりとした公園で大分浮いていた
周りの視線を感じているせいかその女の子は父親の影から出てこようとはしなかった

父親が目線を合わせ女の子に話しかけているのが何となく聞こえたけど、自分たちの住んでいる国の言葉では無いという事を幼いながらに感じていた


「I'd like to return.Because I'm different from everyone, everyone is seeing this.」
「You'd like to make a friend, wasn't it being talked about?」
「But…」

多分、日本語が話せないんだろう
そんな親子の傍に私は近づいた

近づいた私に気がついた父親がにっこりと人好きな笑みを浮かべた

「こんにちは」
「っ!…こ、こんにちは」

さっきまでとは違う、自分たちが当たり前のように使っている言葉が発せられて思わずたじろいだ

「にほんご、はなせないの?」

父親の後ろに隠れてしまった女の子の方を向いて尋ねた

「そうなんだ…まだ日本に来て日がたってないから」
「おじさんははなせるんだね」
「ああ…おじさんは元々日本人だからね」
「へぇ…どこからきたの?」
「うーん…ここからずっと遠いところでね、ロシアっていうんだ。僕のお嫁さん、この子のお母さんが住んでたところなんだ」
「ろしあ…?」

当然、当時の私がロシアなんて知っているわけ無い
首を傾げた私におじさんは苦笑いを浮かべた

「良かったらうちの子と遊んでくれないかな?お嬢ちゃん」
「うん、いいよ」

私がそう答えるとおじさんはくるりと体の向きを変えてまた女の子に話しかけた

「This daughter plays with you.」
「…Really?」
「Of course, look.」

そう言っておじさんは女の子を私の前に立たせた

「Well,...」
「一緒に遊ぼう」
「…?」

私の言葉が分からなかったのかおじさんに助けを求めるように見上げた

「You're telling to let's play together.」
「っ!」

おじさんの言葉を聞いた女の子は目を輝かせて私を見た

「Thank you!!」

この言葉は聞いたことがある。ありがとう、だ
その言葉を聞いて私は嬉しくなった

私は女の子の手をとって砂場まで歩いていった
おじさんも後から付いて来ていた
砂場ではさっきまで使っていたスコップとバケツで砂の山を作る

「なまえ、なんていうの?」
「…?」

…言葉が伝わらないのは凄く不便だ

「What name is it?」
「!…Harune」

おじさんの言葉を聞いて(多分言葉を伝えてくれた)ポツリと小さな声で教えてくれた

「わたしのなまえはきよこ」
「き、よ、こ?」
「そう」

こくりと頷くと遥音はもう一度きよこ、と言った

「あ、りが と、う」
「!」

さっきとは違う、たどたどしい日本語
それでもなんとかして私に感謝の気持ちを伝えてくれたことが凄く嬉しかった
初めてちゃんと言葉を交わすことが出来た

「わたしも、ありがとう」

私の言葉に遥音もニコリと笑みを浮かべお互い笑いあったのだ。

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