「遥音、もしかして熱ある?」
「え?気のせいだよ、平気平気!」
朝練を終え片付けをしているときにきよちゃんが訝しげな顔をして私の方を覗き込んだ
最近ちょっと忙しくて寝不足気味だけど別に体調に変化は無い
朝、きよちゃんとそんな話をしてから時間は流れて今はお昼休み
孝支先輩と何時ものようにお昼ご飯一緒に食べ、二人で楽しくお喋りをしていたらいつのまにか時間が来てしまって教室へ戻ろうとベンチから立ち上がろうとしたとき
急に視界がぐわんと歪んだ
「遥音っ!!」
倒れる、そう覚悟したけど孝支先輩が私を抱き止めてくれたお陰で最悪の自体は免れた
ありがとうございます、そう言いたいのに次第に視界が霞んでそのまま目の前が真っ暗になった
真っ暗になる前の孝支先輩の表情が頭から離れなかった
「…遥音っ」
そんな顔しなくても、私は大丈夫ですよ
だから、そんな泣きそうな顔しないで…
****
遥音が倒れた
……俺の目の前で
ここは保健室で遥音はまだ寝ている
先生からは寝不足と過労によるものらしいから眠れば大分良くなる、と言っていた
眠っている遥音の顔を見ると目の下にはうっすらと隈ができていて額に触れてみるとじわりと熱の熱さが俺の掌に伝わった
「…はぁ」
情けない
彼氏として失格なんじゃないだろうか…
彼女の些細な変化を見抜けないなんて
「ごめんな、遥音」
額から頬に手を滑らせゆっくりと撫でる
眠りは深いみたいで遥音が起きる気配は無い
「菅原君、ここは私が居るから授業に出なさい」
「…はい」
ずっと此所にいたいけど、授業をサボったって遥音が知ったら悲しそうな顔をするのは目に見えて分かる
先生もそれが分かっていたから言ったんだろう
俺は後ろ髪引かれる思いで保健室から出て教室へ向かった
少し授業に遅れて教室に入り自分の席に着く
くじ引きで偶々隣の席になった大地が心配そうに此方を見た
俺は視線だけ大地に向け授業に集中することにした
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