あの日を境に私と遥音は一緒に遊ぶ事が日課になった。
幼稚園にはまだ入る前だった遥音は私がいない間、両親に日本語を教えて貰っていたみたいだった。
それでも遊ぶ時はまだお互いに言葉が通じなかったから遥音の両親のどちらかが傍にいた。
遥音はおばさんにそっくりだったけど、目元はおじさんに似ていた。
私は笑った時の遥音の顔がとても好きだった。
それを伝えると遥音はまた嬉しそうに笑うのだった。
ある日の事だった
いつものように午前中で幼稚園が終わり、お昼を食べてから近所の公園へ向かう
公園に着くとそこには既に遥音の姿があった
今日はおじさんじゃなくておばさんが一緒だ
「遥音!」
「っ!」
私が声を掛けると地面に絵を書いて俯いていた顔を上げこちらにとてて、と駆けてきた
「なにしてたの?」
「あ、…え、かいた」
「え?」
私が聞き返すとこくりと頷いて遥音は私の手を引いて絵を書いた場所へと連れて行った
そこには2人の女の子らしきものが描かれてあった
「これ」
「ふふふ、これね、潔子ちゃんと遥音を描いたみたいなの」
後ろから見ていたおばさんが私に言った
「毎日潔子ちゃんと遊べるのが凄く嬉しいみたいでね、これからも仲良くしてあげて頂戴?」
「…うん、遥音はわたしがまもってあげるからしんぱいしないで」
「あらあら、それは心強いわぁ…来年から遥音も幼稚園だから潔子ちゃんがいるなら心配ないわ」
その言葉に私は強く頷いた
私はお姉さんだから、遥音を守ってあげないといけないんだ
子供ながらにそう思ったのを今でも覚えてる
「き、」
「?どうしたの、遥音」
「きよ、ちゃん」
「!」
きよちゃん?今まできよこって呼んでたのに…
首を捻る私を見て遥音は顔を赤らめておばさんの後ろへ隠れてしまった
それを見ておばさんはまた笑った
「あのね、日本ではニックネームで呼ぶと仲が良くなるって聞いたことがあって…それをこの子に教えてあげたのよ、そしたら私も潔子ちゃんともっと仲良くなりたいって言い出したの…嫌だったかしら」
「う、ううん」
驚いたけど、嫌じゃなかった
遥音も、私と仲良くなりたいって思ってくれてるんだ…
「遥音、もう1かいいって?」
「?」
「She's Please say again.」
遥音はおばさんが伝えてくれたのを聞いて隠れていた体をそっと出し私の前にやってきた
遥音は顔を上げ私を見上げると、少し恥ずかしそうにはにかんだ
「……きよ、ちゃん」
「うん」
「きよちゃん」
「なぁに?」
「すき、」
「うん、わたしも遥音のことすきだよ」
「っ!」
私は名前を呼んでくれた遥音の手を握った
遥音は握った手をおずおずと握り返してくれた
「Thank you for being a friend.」
「…ありがとう?」
その言葉しか聞き取れなかったけど、私の言葉に遥音は大きく頷いた
遥音の手は私よりも小さかくて柔らかかった
「わたしがまもってあげるから」
「?」
私はお姉さんだから、しっかりしないと
にっこりと私が笑うと遥音も笑顔を返してくれた
遥音のこの優しい笑顔が私は大好きだ
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