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結婚してから変わったこと
それは仕事から帰ってきて愛乃がいること

学生時代は実家暮らしだったから当たり前だけど別々だった
それが今では帰ってくると必ず愛乃が家にいて当たり前のように「お帰り」と出迎えてくれる
その事がまだ慣れなくてなんだか落ち着かない
いつか、それが普通になっていくんだろうか

そんなことを考えながら自分の家に帰るため駐車場から車を出し帰路に着く
仕事中は同僚や先輩が五月蝿いため外していた指輪が街灯に当たってキラリと光った
自分が結婚指輪をつけるなんて…
知らず知らずのうちに口元が緩む
昔は指輪なんてと思っていたけど存外、悪いものでもない

マンションのエレベーターに乗り込み自分の住む階のボタンを押す
数分も経たないうちに到着したことを告げドアが開く

今日の夕飯は何だろうか
この前の料理はあり得ないミスをしていたけど今日は無事だろうか
そんなことを考え我が家のインターホンを鳴らす

暫くするとはーい、という声と共にパタパタと小走りで向かってくる音がした
ガチャリと鍵が開く音がしてドアを開けるとそこにはエプロン姿の愛乃がいた

部屋に入ると肉じゃがの香りが部屋中に漂っていた
今回は失敗しなかったみたいだ
その事に少し安心しつつ、テーブルにつく

暖かい肉じゃがに手を付ける
その味は自分の家で食べてるそれと同じ味がした

どうやら愛乃は母さんにわざわざ家の味を教わりに言ったらしい
そんはことしなくてもいいのに
確かに家の味は一番食べなれているけど、僕は愛乃の作ったものなら食べるつもりだし
…まぁ、こんなこと絶対言わないけど


「美味しい?」

肉じゃがに箸を付けたのを見てタイミングよく僕に言う愛乃

「悪くないんじゃない」
「そっか」

美味しい、と言わない僕に対して不満を言うことなく嬉しそうに微笑む愛乃
普通なら文句の一つも言われても仕方がない筈なのに付き合ってから今まで手料理を食べて一度美味しいと言わないことに不満を漏らしたことはない

よく出た奥さんだと思う
もし自分が逆の立場だったら絶対文句言ってる
それなのに…

未だに嬉しそうにしている顔を見てると何だかこちらまで毒気を抜かれてしまうようだ

「愛乃はさ、不満とかないわけ」
「え?不満??」
「…まぁ、」
「ないよ」
「は?」
「不満なんてないよ」
「…ふーん」
「だって蛍ちゃんは私が料理失敗しても絶対に全部食べきってくれるもの」

そう言って愛乃も自分で作った肉じゃがを食べた
今回は上手くできた、とまた嬉しそうに笑っていた

僕もまた我が家と同じ味の肉じゃがを口に含んだ
口元が緩む様な気がした

それを見てまた愛乃が笑みを深くしたことは僕が知る由もない