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「おーい、月島ぁ!社食行こうぜー」
「はい」

休憩時間になり仕事も一段落したとき先輩に声をかけられる
返事をした後今朝愛乃が作った弁当を持って席を立つ

「いいよなぁ…月島は」
「?…何がですか」
「何がってそれだよそれ!」

先輩が指すそれとは僕が今手に持っている弁当袋

「月島んとこ新婚だろ?いいよなぁ、うちの嫁さんなんかもう弁当作ってくれねぇよ。新婚時代が恋しい」
「先輩は何時頃結婚されたんですか」
「俺はもうすぐ13年経つかなぁ…昔は毎日作ってくれてたって言うのに」

あの頃は良かったよなぁと先輩は泣き真似をして言った
…そういうものなんだろうか
愛乃もいずれそうなっていくのだろうかと脳内で想像してみる

いや



「………出来ないな」
「ん?なんか言ったか?」
「いえ、なにも」

愛乃はきっと何十年経ったとしてもこっちから言わない限りはずっと作り続けるだろうな

「さーて、今日は何食うかなぁ…あ、月島は席頼むわ」
「分かりました」

食堂へ着き先輩は食券機の前に立ち僕は空いている席を探す
まだ休憩時間になったばかりなため人はまばらだった
できるだけ壁側がいいと辺りを見渡すと丁度いい席を見つけ、そこに座る
数分後には先輩もやって来て食事を始める

今日の先輩はがっつりいきたいためカツ丼定食にしたらしい
僕は弁当袋を開け弁当を取り出す
前の席に座る先輩の視線に気づき顔を上げる

「…何ですか」
「いやー?弁当の中身が気になって。俺に気にせず開けて」
「……開けずらいんですケド」
「いーからいーから!」

ニヤニヤする先輩をジト目で見て仕方なく蓋を開ける
開けてみるといつも通りの弁当
特に変わりはない
まぁ、強いて言うならば玉子焼きが少し焦げてるくらいだ
多分砂糖を入れすぎたんだろうけど

「うわぁー美味そうだな」
「はぁ、ありがとうございます」
「いーなぁ、俺になんか一つくれよ」
「え、何でですか」
「いいじゃねぇかよー。な、いいだろ?一つだけだから」

可愛く首を傾げてもおじさんがやると全然可愛くないし
渋々ウィンナーを取ろうとしたらそれは焼いただけだろ!と何故か怒られた
どうやら愛乃の手作りが食べたいらいし
まぁ、分かってたけど

仕方なくほうれん草の胡麻和えをカップごと渡す
カツ丼だけではあまりにも野菜が足りなさ過ぎてるし

「これ、手作り?冷食じゃなくて??」
「いらないなら僕が食べますけど」
「いります!食べさせて下さい!」

頭を下げた先輩は代わりにと言ってカツを1切れ僕の弁当の蓋に乗せた(デカイ)

愛乃が作ったほうれん草の胡麻和えを食べた先輩は何故か俯いた
口に合わなかったんだろうか
まぁ食べるっていたからには全部食べてもらうけど

俯いている先輩を他所に僕は弁当のオカズを食べていく

「口に合わなかったんですか?」
「……だろ」
「…はい?」
「口に合わないわけないだろ?!何だよ、めっちゃ美味いじゃねぇかよぉ…!」
「はぁ、ありがとうございます」
「オレの嫁さんなんか新婚の時ほうれん草のお浸し何故か酢まみれてくそ不味かったんだぞ!」
「…ほうれん草のお浸しが酢まみれ」
「なんか酢とみりんを間違えたらしいけど」

想像してみて絶句した
それは絶対に不味いだろうな
お浸しと思って食べたなら尚更

「なんだよー手料理めちゃくちゃ上手い奥さんとか羨ましすぎる」
「いや、昔はそんなに上手くなかったですけど」
「それでも上達してんだからいいじゃねぇか。オレの嫁さん手料理上達し無さすぎて俺の方が上手くなってきてるわ」

上手になったのはそれこそ最近だ
ついこの間まで砂糖と塩を間違えてたし
作ってもらってるから文句はそこまで言わないけど

「なぁ、奥さんの写メねぇのかよ」
「無いですけど」
「はぁ!?新婚なのにか!」
「え、新婚だとそんなに写真撮るんですか」
「いや、撮るだろ!新婚旅行は?!」
「そう言えば行ってないですね」
「はぁ!?」
「先輩、声大きいです」
「いや、お前そこはいけよ!」

先輩に言われて新婚旅行というものがある事に今気が付いた
多分新婚旅行に行ったとしてもそんなに写真はとらないと思うけど
元々好きじゃないし

「気が向いたら、そうします」
「気が向かなくても行けよ、そこは」
「とにかく、写真は無いです。あっても見せないですけど」

また何か言っている先輩を無視して弁当を食べ進める
先輩の話に付き合っていたらいつまで経っても食べ終わらない

「先輩、早く食べないと時間なくなりますよ」
「うぉ!もうこんな時間か」

いつもより少し焦げてる玉子焼きを見てクスリと笑みを零した




(何!?お前ら月島の奥さん見たことあんのか!)
(ありますよー、この前飲みに行った時に泊まったんすよ。なぁ伊東)
(そうそう、めっちゃ可愛いですよー)
(小柄で気の利くいい奥さんっすよ)
(まじかよーすげぇ見てぇじゃんかよー)
(僕の顔見ながら言わないでくれますか)
(なーケチケチすんなよー、奥さん紹介してくれよ)
(嫌ですよ)
(今度俺の奥さん紹介するからさ)
(いや、意味が分んないんですけど)




モブの先輩たちの紹介

先輩その1
多田 和人 (36)
この前飲みに行ったときに家に寄った先輩の1人
仕事はできるが酒が入ると絡みがウザイ
最近膝が痛いのが悩み
子育てで忙しいため嫁のあたりがキツイらしい
結婚8年目

先輩その2
伊東 友貴 (29)
同じくこの前飲みに行ったときに家に寄った先輩の1人
程よくくだけた比較的とっつきやすいタイプの先輩
嫁に尻に敷かれてる
ゴミ出しと食器洗いは彼の役目
結婚4年目

先輩その3
高田 雅人 (39)
もうすぐアラフォーになる事が憂鬱らしいが心はいつでも少年がモットー
絡みが普段からめんどくさいがこれでも部長
嫁の手料理が全く上達しないため段々自分の技術が上がってきている
娘(12)が思春期になり、対応に悩む日々を送っている
結婚13年目

多分今後もちょくちょく出てきます