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いつもの様に蛍ちゃんのお出迎えをする為に玄関のドアを開けるとそこには旦那様と見知らぬ男性2人がいた

今日は会社の先輩に飲みに誘われたから遅くなるとちゃんと連絡があったので何か軽く食べられるのを準備して待っていたところだった

私は会社に勤めているわけでは無いから何となくだけど、きっと先輩に言われて断れなかったのかなとなんとなく思った
その証拠に蛍ちゃんの表情は苦虫を噛み潰したような顔をしていた
それを見て私も少しだけ苦笑した

「うっわ…すっげー可愛い奥さんだな」
「はぁ」
「俺は毎日見てるから見慣れてますってか!羨ましいな!」

2人の先輩であろう男性たちが蛍ちゃんになにかコソコソと耳打ちをしている
それを見て会社でもなんとか上手くやれているみたいだと安心した

「お仕事お疲れ様です。どうぞ、中に入ってください。なんにもお構いできませんがくつろいで行って下さい」

2人に中に入る様に促しリビングへ案内する
後ろの方でまだ様子を見ていた蛍ちゃんの所へ向かい声を掛ける

「蛍ちゃん、おかえりなさい」
「……ただいま、連絡出来なくてごめん」
「あぁ、それは全然いいけど、おつまみも軽くしか出来ないかも」
「いいよ、何にも出さなくてどうせ既に出来上がってるし」

迷惑そうにそう言った蛍ちゃんに眉を下げる
そういうわけにはいかない
何か冷蔵庫の中身で作れるか確認してみよう

2人とも元々お酒はあまり飲まないので家にお酒は置いていない
私の考えを読み取ったかのように蛍ちゃんは手に持っていたビニール袋を軽く持ち上げた

「あの人達に飲む分の酒は買わせたからあと軽くつまみも」
「そうなんだ、良かった。じゃああと何か家にある物でおつまみ作るね。蛍ちゃんも早くリビングに行って?待ってるだろうから」

蛍ちゃんの鞄を受け取り背中を押そうとするとまだ何か言いたげな顔をしている蛍ちゃんと目が合った
何だろうかと待っていると小さめな袋を私に差し出した
疑問に思いながらもその袋を受け取り中身を見てみるとちょっとお高めのコンビニのチーズケーキだった
ぱっと顔を上げるとふいと顔を逸らされた

「い、いいの?」
「いいも何も買ってきたんだから食べれば?僕はチーズケーキ好きじゃないし」
「ありがとう!」
「じゃあ後はよろしく」
「うん、直ぐに準備するから待ってて」

私はキッチンに急いで向かい冷蔵庫にチーズケーキを入れた
明日にでも食べよう

おつまみを作るために何か材料がないか確認すると野菜室にキャベツとトマトがあった
1つは塩キャベツでいいとして…トマトって苦手な人は苦手だよなぁ
他になにかないか見てみると冷蔵庫に豆腐が残っていた
そう言えばこの前お母さんが豆腐ととろけるチーズを乗せてレンジでチンすると美味しいよって言ってたなぁ
よし、それにしよう

作るメニューを決めて先に塩キャベツを作る
その後に豆腐に醤油とごま油を混ぜたタレをかけてとろけるチーズを乗せてレンジでチン

うんうん、なかなかの出来じゃないかな?
まぁ乗せてチンしただけなんだけど

作ったものをトレイに乗せてリビングへ向かう
既に何本かお酒を飲み終えているようだがまだまだ終わらなさそうだ

「良かったらどうぞ」
「え?!いいの?」
「有り合わせになってしまったのでこんな物しか作れなかったんですけど」
「いやいや!え、マジでいいの?!すっげー旨そう!」
「あはは、お口に合えば良いんですけど」

お皿をテーブルの上に置いて蛍ちゃんの隣に立つ
さっきよりもほんのりと頬が赤くなっているところを見ると結構飲まされたみたいだ

「月島ー!お前ホントにいい奥さん貰ったな!うちの嫁なんてもう可愛げなんてありゃしない!」
「うちもだ!爪の垢を煎じて飲ませてやりたい!」
「そんな、大袈裟ですよ」

2人の大バーリアクションにどうしたらいいのか困惑してしまう
そんな2人の薬指にはしっかりとシルバーリングがはめられていた

「月島とはいつ出会ったの?…えっと」
「あ、すみません、自己紹介が遅れてしまって…愛乃と言います。いつも主人がお世話になります」
「いやいや、良いってー月島は無愛想だけどやる事はしっかりやるからな」
「…すみませんね、無愛想で」
「ははは…んで?いつからの付き合い?」
「えっと…」

言っていいのかよく分からずちらりと蛍ちゃんの顔色を伺うも特に嫌がる様な素振りも無いため言ってもいいみたいだ

「幼馴染みなので、小さい頃からです。家が近所で…」
「へぇ!!幼馴染みってなんかいい響きだよねーそっか、幼馴染みかぁ」
「こんな可愛い幼馴染みがいたら手を出さない分けないわ」
「えっと…」

本当に、どうしたらいいのだろうかこのノリ
あまりお酒を飲む場に行かないためどう反応したらいいのか分からない

「先輩、もういいじゃないですか…愛乃はもう寝る時間なので」
「ええー愛乃ちゃん寝ちゃうの?一緒に飲もうよー」
「はいはい、愛乃は部屋に行っていいよ」
「えっ、良いの?」

蛍ちゃんはそう言ってグイグイと背中を押しリビングから出そうとする

「お酒飲んでもすぐ酔い潰れるんだから飲まなくていいよ」
「…うん、そうだね。じゃあ、先に寝室に行っとく」
「先に寝てていいから」
「うん、お休み」

先輩たちに挨拶をしてから寝室へ向かう
さっきまで賑やかだったけど一気に静かになる
2人で寝るダブルサイズのベッドに潜り込むとひんやりとした冷たさに包まれる
きっとまだまだ蛍ちゃんたちは飲むんだろうなぁ、と思いながら布団に顔を埋め目を閉じた



▼▼▼


「…ん」

モゾモゾと布団が動いている感じがして目を開ける
薄らと暗がりの部屋に目を凝らすとそこには蛍ちゃんがいた

「先輩たちは?」
「あの人たちはリビングのソファで寝てる」
「そっか、あ…ひざ掛けとか」
「いいよ、なんか適当にタオルケットみたいなの掛けてきたから」
「そうなんだ…ありがと」

珍しくたくさん飲んだみたいで少しだけお酒の匂いがした
ゆっくりと布団の中に入って来た蛍ちゃんの胸の中に擦り寄ってみた
蛍ちゃんは何も言わずに私の背中に腕を回してぎゅっとしてくれた
それが嬉しくて蛍ちゃんの顔を見ると眼鏡を外した蛍ちゃんと目が合った

そこからどちらからとも無く唇が合わさった
最初は触れるだけのもの
段々と深く混ざりあって少しだけ息苦しくなる

「…ん、はぁ……ちゅ、…ふ、ん」

いつもとは違うお酒の味がして、それがなんだかドキドキした

唇が離れ銀の糸が引く
それを器用に蛍ちゃんが親指で拭ってくれた
その仕草がなんとも色っぽくて目を逸らしてしまった

「は、何逸らしてんの」
「な、なんか…はずかしくて」
「へぇ…」

ニヤニヤとする蛍ちゃんに私はまたドキドキしてしまう
こういう雰囲気はいつまで経っても慣れない

「まぁ、今日は他に人がいるからこれ以上しないけど」
「…え、」
「何、して欲しかったの?」
「ち、ちがっ!」
「へぇー、愛乃も言うようになったねぇ」
「ちがうっ!ちがうもん!」

そりゃちょっとは期待したよ?
でも本当にちょこっとだけだもん!
必死で否定すればする程蛍ちゃんは何だか嬉しそうだ

「ホントに違うんだってばー…」
「はいはい、わかったてば」

未だにクスクス笑っている蛍ちゃんの胸に顔を埋める
ポンポン頭を撫でられて次第に瞼が重くなってきた

「お休み、愛乃」

夢の中に微睡みながら優しい声が聞こえた
唇に柔らかいものが触れてそれがキスだったらいいなぁ、なんて思った


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(月島ーお前ほんと奥さん大事にしろよー?)
(そうそう、あんな可愛くて出来る女滅多にいねぇぞ)
(知ってます、愛乃は妻の鏡ですから)
((!?!!?))
(つ、月島がデレた!!)
(こりゃあ明日は槍でも降るぞ)
(……人をなんだと思ってるんですか)