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「#幼馴染」のBL小説を読む
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ご飯を食べ終えてお店から出る
外はぽかぽか陽気でとても気持ちがいい

このまま日向ぼっこなんかしたら最高なんだろうなぁ…
そんなことを思い隣を歩く旦那様の顔を見上げる

「蛍ちゃん」
「なに」
「ここの近くにね、公園があるでしょ?そこに行きたいんだけど…ダメかな」
「…別にいいよ。最初に何処かに寄りたいって言ったの愛乃のほうなんだし」
「良かった!」

ずっとお店の駐車場に車を停めておくわけにもいかないので車を移動させるために乗り込む
確かあそこの公園は大きいから駐車場があった筈…
蛍ちゃんにその事を伝えるとあぁ、と思い出したように呟いた
数分走らせると程なくして見えてきた
天候も良くて人がたくさんいるかと思ったけどお昼を少し過ぎた時間帯はまばらでそこまで多くなかった
駐車場に車を停めて公園の中に入る
遊具があるところと散策コースがあるところがあったりして年齢層も幅広いこの公園

今日はいつもより暖かくて日向ぼっこには持ってこいの場所を私は知っている

「ねぇ、蛍ちゃん」
「なに」
「こっちに穴場があるの、蛍ちゃんもきっと気に入ると思うよ!」

私はそう言ってさり気なく蛍ちゃんの手を握った
蛍ちゃんは手を繋ごうって言っても絶対に素直にやってくれないもん

「…ちょっと愛乃」

ほら、案の定蛍ちゃんは嫌そうな声を上げた

「デートだからこれくらい良いでしょ?人気もないし誰も見てないよ」
「………」

まだ何か言いたげな目で私を見てくるけど素知らぬ顔をして蛍ちゃんの訴えをスルー
だってそうでもしないと蛍ちゃんは手を離そうとするから
だから私はそうさせないためにギュッと繋いだ手を握る力を強めた

私の半1歩後ろを歩く蛍ちゃんは溜息を零した後諦めたように軽く手を握り返してくれた
その事が嬉しくて私は思わず頬が緩んだ

……あぁ、蛍ちゃんが後ろにいてくれて良かった
だって私の隣を歩いていたら絶対に不機嫌になるもの
やっぱりデートって楽しい!!

気を良くした私は意気揚々と目的地まで足を進めた





「蛍ちゃん、ここだよ!」

どうかな、と言って私は後ろを振り返る

「……こんな場所あったんだ、この公園」
「良いでしょう?ここ、知ってる人が少ないから煩くないしゆっくり過ごせそうじゃない?」

ここは森林が多い公園だから少し中の方に入ると日当たりも良くて木陰のあるいい場所が結構ある
偶に野鳥がやってきたりして凄くいい雰囲気なんだ
害虫は来ないし風通しも悪くない
ここを知っている人は少ないから滅多に人も来ない
心地よい風が入って来るから今の季節にはぴったりなのだ

「あそこの木の下で私は良く休んだりしてたよ」
「……いつ来たわけ?こんな場所」
「うーん、いつだったかな…小さい頃にもよくここに来てたでしょ?小学校の遠足とかで……その時に私迷子になったの覚えてる?」
「あったかもね」
「その時にたまたまここに紛れ込んじゃったの。だから見つけたのはホントに偶然」

まぁその後すぐに蛍ちゃんが見つけてくれたから先生にも怒られずに済んだんだけどね

「その後もちょくちょくここに来てた事があったの。ここはお兄ちゃんもお姉ちゃんも知らないの。蛍ちゃんだけだよ」
「……ふぅん」
「ほら、あそこに行ってみよう!」

蛍ちゃんの手を引っ張り大きな木の下まで歩く
ここの公園は全面に芝生が敷かれているから座っても全然問題無い
でも一応お気に入りの洋服だから座る前にハンカチを下に敷いてから腰を下ろした

「ほら、蛍ちゃんも座って座って!」

自分の隣をポンポンと叩いて座るように促す
あ、蛍ちゃんも下に何か敷いた方が良いかな?
ハンカチはないけど大きめなタオルを予備で持って来てたからそれを敷いたらいいかも

そう思って私はカバンの中からタオルを取り出して芝生の上に敷いた

「はい、どうぞ!」

私が再び促すと蛍ちゃんは渋々と言った感じでタオルの上に腰を下ろした

その時、サァッと心地よい風が髪を揺らした

「…ね?気持ちいいでしょう?」

隣に座る蛍ちゃんの顔を覗き込むとふい、と逸らしてしまった
文句を言わないところを見ると蛍ちゃんも私と同じ気持ちで間違いないだろう

私と蛍ちゃんはお互いに何か話すわけでもなくただ隣にいるだけだった
でもそれが居心地悪いと感じることは無くて寧ろ心地よかった
偶にはこうして2人でのんびり過ごしたかったんだ
いつもいつも仕事で疲れている蛍ちゃんに少しでもリラックスしてもらえる様な場所を提供したかった

どれくらいそうしていただろうか
隣に目を向けると蛍ちゃんは少しうとうととしていた
その様子がなんだか幼く見えてちょっと可愛かった
…こんな事言ったら怒られるから絶対に言えないけど

そんな蛍ちゃんの右腕を軽くつつく
そうしたらうとうとしていた目をパチリと開いてこっちを見た

「蛍ちゃん、良かったらここ使う?」
「…は?」

ポンポンと私は自分の太ももを叩いた
私が何を言いたいのかを理解した蛍ちゃんは顔をしかめた

「いや、別に眠くないから」
「うん、でも横になるともっと気持ちがいいよ」
「…そこまで疲れてもないし」
「さっきも言ったけど、ここホントに人が来ないから人目を気にする必要ないよ」
「……」
「私、蛍ちゃんには今日リフレッシュして欲しいの。だからゆっくり休んで?」

ね、と言ってもう1度ポンポンと太ももを叩いた

「……30分したら起こして」
「はーい」

横になった蛍ちゃんは私に顔を覗かれない様にするためか仰向けでは無く右側(要するに外側)を向いてしまった

私はそんな蛍ちゃんを見て気付かれないように少し笑った
…ぶれないなぁ、ホント
でも私は知ってるよ
蛍ちゃんはしばらく経ったら寝返りを打って仰向けになること

サァッとまた柔らかい風が頬を撫でた
何処からか飛んできた野鳥達が綺麗な声で鳴いている

「…気持ちいいなぁ」

今日は蛍ちゃんと2人で出掛けられて良かったなぁ
こんなに穏やかな日を過ごせるなんて思ってもみなかった
やっぱりここに来て正解だったな…


数分後私の読み通り蛍ちゃんは仰向けに寝返りを打った
昔から寝顔は変わらず、あどけない
私は蛍ちゃんの顔に掛かっている黒縁眼鏡をそっと取り外した
風に揺られて靡いている色素の薄い髪を起こさないように触れる
柔らかくていつまでも触っていたいくらいだ


「……いつもありがとう、蛍ちゃん」


蛍ちゃんは30分で起こしてって言ってたけど私は起こすつもりは無い
毎日お仕事で大変なことも多いはず…

だから今日くらいはゆっくり休んでね