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大粒のなみだ

雛乃に合宿のことを話さないといけないと思いつつもなかなか切り出せない
勿論母さんは毎年のことだから知ってるし、詳細が書かれたプリントも渡している


「にーに、どーしたの??おなか、いたい??」
「ん?いや、大丈夫だよ」
「??」


黙って考え事をしていた俺を心配する雛乃
…ホントに可愛い、目に入れても痛くない

「な、なぁ雛乃」
「なぁに??」
「っぐ!」

雛乃の周りに花が飛んで見える
これから話すことを考えると純粋な眼差しが今は痛い

「あ、あのな来週のことなんだけど」
「らいしゅー??」
「うーん、なんて言ったらいいんだろ…今度部活でちょっと何日か家にいないんだ」
「??にーに、いるよ?」
「うん、今日はね」
「にーにいなくなるの???」
「お泊まりに行くんだよ」

ほんとは合宿で全然お泊まりって感じじゃないんだけどこの方が雛乃にはわかりやすいかもしれない

ついさっきまで周りに花が飛ぶほど輝いていたはずの雛乃の瞳には涙が溜まっていた

「っ!?え、ちょっ!雛乃!?」
「にーに、いなくなっちゃうの??」
「いや、いなくならないよ!!」
「でも、おとまりって」
「そ、そう!」
「ひなは??」
「雛乃はお家だよ」

俺の言葉に雛乃はついに涙をポロポロと零した

「やだぁー!!!ひなもいく!にぃにー」
「雛乃」
「おいていかないでぇっ!」
「…かあさーん」

雛乃は俺の首に短い両手を回して離さない
安心できるようにポンポンと背中を叩くが泣き止む気配はなく正直お手上げ状態だ
どうしたらいいのか分からなくなり、母さんに助けを求める

「なぁに?孝支まで泣きそうな顔して」
「だってさぁ…」

キッチンで洗い物をしていたようで母さんは濡れた手をタオルで拭きながらこっちへ来てくれた
そして今の状態を見て苦笑い

「ひなちゃん」
「あーしゃん!にーにが、ひなを…っ、おいていっちゃう!」
「孝支はひなちゃんを置いていかないよ」
「おとまり、なのに?ひなはひとりなの?」
「私たちはお家にいるからひとりじゃないでしょ?」
「でも、にーにがいないと眠れない……いやだよぉ」

えぐえぐと泣きながら話す雛乃に俺まで泣きそうになる
置いていかれるという不安が強くて仕方がないのだろう
家に来た当初はご飯すら満足に食べていなかったと母さんから話を聞いたしこのままだとホントに寝ないで過ごしてしまいそうな気がする

小さな手で俺を離すまいと力いっぱい握る雛乃
俺にとってこの手を離すことは簡単だけど、それをしてしまったら雛乃は傷付いてしまうだろう

「…雛乃」
「ぅ、…うう」
「明日、一応監督に聞いてみる。雛乃も一緒にいてもいいか」
「っ!」
「…でも、監督がダメだって言ったらちゃんとお家で留守番してて?」
「でも…っ」

グリグリと俺の胸元に擦り寄る雛乃の背中を抱き締める

「約束、できるか?」
「……っ、ひな、いいこにしゅる」
「よしっ!」

まだ瞳の縁には涙が薄らと溜まっているが泣くまいと必死で頑張る健気な雛乃を見るとなんとも言えない気持ちになる
雛乃が泣かなくても良いようにしたいって思ってしまう俺はきっともうどうしようもないんだろうな

その日の晩はいつもは別々な布団で寝るのにぐずってなかなか寝付けない雛乃と一緒の布団で寝た


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