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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -

ごあいさつ

体育館のステージの辺りで固まって食べているところへ歩いていくと俺達に気がついた部員たちがこっちに顔を向けた

そして俺の隣にいる雛乃へと視線を移しギョッとした顔をした
…面白いな

視線を向けられている雛乃は居心地が悪そうに俯いて俺の後ろへ隠れてしまった

「っえ?!だ、だれっすかその女の子!?」
「まさか、か、か、隠し子?!」

いち早く声を上げたのは2年のバカ2人

「…そんなわけないだろ」
「え、じゃあ…」
「うちで預かってる子で、成川雛乃って言うんだ。人見知りだけど慣れてくると大丈夫だと思うから」

ほぉーと呟いて近づいてくる田中
俺の後ろへ隠れている雛乃は肩をピクリとさせジャージの裾をぎゅっと握った

「…に、にーに」
「大丈夫だよ、みんな俺の仲間だ」
「こ、こわいぃ…」

田中の顔を見た瞬間に大きな瞳からポロリと1粒涙が零れた

「え!?な、なんで泣くんすか?!お、俺何もしてねぇのに!!」
「田中声デカイ、あと顔が怖い!」
「そ、そんな…スガさんっ!」

顔が怖いって…と言っている田中を他所に俺は雛乃を抱き上げあやす
おにぎりを大事そうに抱えている姿がまた可愛い

「いつもそんなにデカイ声出す奴いないからもう少し小さめにして、あと見下ろすな。目つきがキツく見える」
「し、辛辣っ!」

当たり前だ、家の可愛い娘だぞ
田中よりも断然大事だ

「えっと、それでその子は何歳だっけ?」

気を利かせた大地が俺に言った

「3歳になったばっかり。家に来たのもそんなに経ってないんだ」
「へぇ、それにしては凄いスガに懐いてるな」
「まぁな!」

旭も同じように雛乃を覗き込む
田中と同じ様にまた泣くかと思ったが顔を向けた雛乃はさっきとは違った

旭は雛乃と目が合うとへらりと気の抜けた笑みを浮かべた

「…おなまえは?」
「俺?俺は東峰旭って言うんだ」
「あ、しゃひ?」
「っ!」
「おいこら、ひげちょこなに顔赤らめてるんだ」
「いや、ちょっ!スガ!痛いって!」

顔を赤らめた旭の腕にグーパンを食らわした
サ行が言えない姿が可愛いのは分かるけどなんかイラッとした

「俺の名前は澤村大地」
「だいち?」
「そう、大地。君の事何て呼んだらいいかな?」
「…ひな」
「うん、じゃあひなちゃん、よろしく」
「うん」

うん、大地は全然大丈夫だな
やっぱり面倒見がいいし、普段は物腰やわらかいからな


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