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小さな宅配便屋さん

菅原side

午前練が終わって昼休憩になった

あぁ、腹減った
早く弁当食いたい

部室へ一旦戻り鞄の中からゴソゴソと弁当箱を探す

「…あれ?…あれ?!」
「スガーどうした?」
「だ、大地っ…俺、弁当忘れたっぽい」
「…マジか」

嘘だろ…こんなに腹減ってんのに弁当忘れるとか
そう言えば母さんが弁当机の上に置いとくからねって言ってた後自分で入れた記憶がない

「はぁ〜最悪」
「まぁまぁ、俺のやつ少し分けてやるから」
「いや、悪いし…坂ノ下で買ってこようかな」
「…あの坂下るのか?しかもコーチこっちにいんのに店開いてんのかな」
「だよなー」
「取り敢えず体育館行くべ」
「あぁ、うん…そうだな」

俺のテンションは駄々下がり
あぁ、俺の弁当…母さん、ごめん

「はぁ…」

部室を降りるために階段を降りていく
カンカンとリズムよく下りていくが依然としてテンションは上がんない

体育館の中に入ってコーチに話をしようとした所で扉がコンコンとノックされる音が響いた
とても大きな音では無かったけど、その音が妙に耳に残った
聞き間違えかと思い暫く扉を見詰めていると再びコンコンと音が鳴った

そして

「たっきゅーびんでーす!だれかー!」
「?!」

聞き覚えのある愛らしい声
でも、この場所で聞こえるはずのない声

そこまで走っていきガラガラと重たい扉を開ける
そこに立っていたのは朝寂しそうな顔をして別れた雛乃だった

俺の姿を写した大きな瞳が輝きを増し、弁当を落とさないように俺に飛びついてきた

「っ!にーに!!」
「おわっ!雛乃!何でここに?!」
「おべんとーおとどけにまりいました!」
「はは、まいりました。な…そっか、ありがとな」
「えへへ…どーいてまして」
「…雛乃はどうやってここまで来たんだ?」
「うん?えっとね…あーしゃんがね、すーぱーでおしゃべりしててね、それでね、にーにがおなかグーってなってるからひながとどけよーっておもって、そしたらね、きょーちゃとあってね、それでね、くるまできたの」
「そっか」

うん、雛乃の言いたい事は良くわかった

…だけどきょーちゃって誰だ?

車で来たってことは母さんが送ってくれたって事だろうし…
そんな事を考えていたら雛乃の後ろから清水がやって来た

「やっぱり、菅原の妹だったんだ」
「清水、おかえり…えっと…妹っていうか」
「…?」

妹的な存在ではあるけど、妹ではない

「ん?スガ、誰だ?その子」
「…見慣れない子だな、妹か?」

ずっと入口の前にいる俺の様子を見に来た大地と旭がやって来た

「いや…妹ってわけじゃ…」
「「「…??」」」

うん、お前らの反応は至って正常だよ
でも説明しにくいんだよな…

「…にーに」

くいっと胸元のジャージを引っ張る雛乃
その瞳は少し怯えているような色をしていた
いきなりたくさんの人に囲まれたらそりゃ不安にもなるよな…
取り敢えず雛乃を落ち着かせるため頭をポンポンと撫でる

「えっと、この子は成川雛乃っていって俺のはとこ。訳あって家で面倒みることになったんだ。」

まぁ、事情は色々あるけど今ここで話す内容でもないからな

「あぁ、だから最近帰るの早いのか」
「え?」
「そう言えばそうだな…学年上がってからあんまし寄り道しなくなったもんな、スガ」
「そ、そうだっけ?」

大地と旭は2人してうんうんと頷いた

「まぁ、どこと無く似てるような気がしないでも無いけど」
「そうか?」

まだ不安げな雛乃をあやしながら見詰める
顔を上げた雛乃は眉を少し下げてはにかんだ

あぁ!可愛いなぁ!

「にーに、おなかだいじょーぶ?ぐーってなってない?」
「あぁ、そうだな。折角雛乃が届けてくれたから食べないとな!あ、そう言えば母さんは?」
「あーしゃんはね、くるまでまってるとおもう!」
「そっか」

鞄の中から携帯を取り出すとメールが来ていた

『ひなちゃんの事よろしくね。お母さんは休憩時間が終わる頃にまた迎えに行きます。終わったら連絡してね。』

了解、とだけ送って携帯を閉じる

「雛乃はお腹空いてないか?」
「うーんとね、えっと…このくらい!」

雛乃はそう言って小さな手で親指と人さし指で少しだけ隙間を作った

「あのね、あーしゃんからねおにぎりもらったの!」

小さな肩掛け鞄の中をゴソゴソと探ってこおにぎりを出した
俺達にとったら足りないくらいの大きさの物が爆弾おにぎりくらいのサイズに見えた

「さっきのすーぱーでかった!」
「じゃあ、今日は雛乃と一緒にお昼が食べられるな!」
「うん!」

俺は雛乃の手を引っ張って体育館の中へ連れていった
ちらりと雛乃の方を見ると物珍しそうにキョロキョロと中を見回していた


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