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練習後の癒し

雛乃が俺の弁当を届けに来てくれた日から土曜日の練習はよく付いてくるようになった
もちろん、コーチや先生の許可はちゃんともらった
監督が許可を出してくれるとは思っていなくて驚いたが雛乃にはきっと誰にもかなわないんだろうと思った
ちびっ子の力って半端ないな…

今、丁度練習試合をしているところだが雛乃は武田先生の膝の上でじっと様子を見ている

なんだかああやっていると親子のように見えてくる
時折何かを言っている雛乃に武田先生は優しく声をかけている
その隣で優しい笑みを浮かべる清水
…え、何あれ家族ですか

って今は練習中だ
ちゃんと集中しなきゃな!


▼▼▼


「試合終了!!ちゃんと水分摂れよー!」
「「「「あざっしたー!!」」」」

今日の練習が終わり水分補給をする
喉を鳴らしながらボトルの中に入っているスポーツドリンクを飲む

「っぷはー!生き返ったァ…」

ボトルから口を離し口元を拭う
やっぱり部活後の水分は一味違うな
ほっと一息ついた時パタパタと小さな足音が聞こえてきた

「にーに!」
「お、雛乃」

足音の主は勿論雛乃
手には真っ白なタオルを持っている

「にーにすごかった!」
「そっか、ありがとなー」
「うん、えへへー!あ、にーに、たおる!」

手に持っていたものを俺に差し出す
それを受け取ろうとしゃがんで手を伸ばすと突然視界が真っ暗になった

「ひながふいてあげるー!」
「ちょ、雛乃っ…」
「にーにかっこよかったよ!」
「う、うん…ありがとう…でも前が見えないんだけど…」

手付きは優しいから痛くはないけど前が見えないのは困る
しゃがんだ状態だと転んだ時が危ないため床に座り雛乃の気が済むまで待つ
ぽんぽんとタオルを当てる手は小さくて暖かい

「ちゃんといい子にしてたか?」
「うん!ひな、いいこしてたよ!たけちゃときょーちゃといっしょでね、たのしかった!」
「そっか、良かったな」
「うん!…あ、でもね、にーにといっしょがいちばんよ」

明るくなった視界の先には少し頬を染め微笑んでいる雛乃が見えた
今まで視界が暗かったからまだ目が明るさに慣れていないのが原因だとは分かっているけど雛乃の周りがめちゃくちゃ輝いて見えた

天使だ、天使がいる…

一旦落ち着こう、深呼吸だ
息を吸って吐いてを繰り返し気分を落ち着かせる
……よし

「にーに?だいじょーぶ?」
「うん、大丈夫」
「つかれた?」
「うーん…少しだけな。でも全然大丈夫」

俺の言葉に雛乃は閃いたと言わんばかりに目を輝かせて言った

「あのね、おーしゃんはね、ひながぎゅーってするとげんきになるんだって!にーにもひながぎゅーってするとげんきになる??」
「え?」

ちょ、今なんて??
え、俺の父さん雛乃にそんな事してもらってんの?
俺知らないんだけど
そう言えば俺は父さんが仕事から帰ってきた時出迎えして無いけど雛乃は帰ってくるのが早い時は行ってるよな
…もしかしてその時か?

「にーに?」
「っ!」

完全に意識が違う所に飛んでいた
雛乃の声にハッと顔を上げると両手を軽く広げて首を傾けていた

「ぎゅーする?」

くそかわ!!!

「いや、でも、ほら、俺今汗臭いしさ」
「へーき!くしゃくないよ!」

雛乃はそう言うと俺の胸の中にダイブしてきた
小さな腕を一生懸命俺の背中に回してぎゅっと掴む雛乃

「ぎゅー!!」

あぁ、もうホントに可愛いんですけど
なんなの、なんで一々効果音を声に出すの?
可愛すぎるんですけどウチの子

この気持ちのやり場をどうしたらいいか分からず取り敢えず俺も雛乃の小さな背中に腕を回した

「にーに、げんきなった?」
「うん、すっごい元気になった」
「ひなもにーにがぎゅーってしてくれたからもっとげんきになった!」
「元気だったのに?」
「うん!もっともっともーっとげんきになったの!」

むくりと俺の胸から顔を上げニッと歯を出してはにかんだ雛乃
俺もつられてニッと笑う
あぁ、ほんと癒しだな

練習後にこんな気持ちになるなんて雛乃は本当に凄い

「雛乃、ありがとな」
「えへへー、どういてまして!」
「どういたしまして、な」



(あそこの周りに花が飛んでるように見えるのは気のせいか?)
(いや、俺にも見えるぞ龍)
(羨ましい、俺にも癒しが欲しいっ!)
(何言ってんだ龍、俺達の癒しは潔子さんだ!)
(おう、そうだったな!ノヤっさん!!)
(…田中の場合はひなちゃんに怖がられてるからな)
(ちょっ、大地さん!ホントの事だけど傷付くっす!)
(何で旭は大丈夫なのに田中はダメなんだろうな)
(…やっぱり坊主で目付き悪いからじゃないですか)
(なんだと月島コラァ!やんのかコラァ!!)
(やりませんよ、面倒くさい)
(…今度ひなちゃんに聞いてみるか)


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