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「#幼馴染」のBL小説を読む
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- ナノ -

「ツッキー、行こうよ」
「なんで僕まで…山口1人で行ってくれば?」
「えぇ…」

遠くでそんなことを言っている2人組に近づいて行くと俺に気が付いた

「あ、菅原さん」
「……」
「ほら、雛乃」

自分の体を反転させ2人に顔が見える様にすると雛乃はちらりと目線を向けた

「可愛いですね」
「だろ?」

山口の言葉に気を良くした俺
やっぱり雛乃は誰から見ても愛らしいのだ

「…おっきーね」
「ん?…俺が?」
「ん」
「ツッキーはもっと大きいよ!」
「…つっきー?」

山口に自ら話しかけた雛乃は聞き慣れない名前を聞いて小首をかしげた

「ほら、あそこに立ってるメガネかけてる人がいるでしょ?」
「うん」
「あの人がそうだよ」
「つっきー?」
「うん」
「つっきー!」

山口のあだ名呼びが気に入ったのか月島の方に向かって呼びかける雛乃、可愛い

ツッキー呼びに驚いた月島はギョッとした表情を浮かべてこっちにスタスタと歩いてきた

「ちょっと山口、何勝手に教えてんの」
「え、だって」
「うるさい、山口」
「ごめん、ツッキー」
「つっきー」
「…ツッキーって呼ぶの止めて」
「なんで??」
「…僕には月島蛍って名前があるんだけど」
「けー?」
「…それじゃアルファベットみたいに聞こえるんだけど…」
「??」
「いや、もういいよ別に」

小さな溜息を1つ零しチラリと雛乃に視線を向けた

「…あまり似てないんですね」
「まぁ、はとこだしな」

瑠花さんも母さんに似てるわけじゃないし雛乃は多分父親似なんだと思う

「ひなとるーちゃもあんまりにてないよ!」
「…るーちゃ??」
「うん!」

雛乃の言葉に山口が首を傾げる

「るーちゃって言うのは雛乃の母親の事なんだ」
「へぇ、そうなんですね」
「るーちゃはね、きょーちゃとすこしにてるの!」
「きょーちゃ??」
「もしかして清水のこと?」

そう言えば雛乃は清水と一緒に体育館へ来たみたいだ
後でお礼をちゃんと言っとかないとな

まぁ、顔立ちは何となく似てないことも無いような…
だから清水とは打ち解けやすかったのかも

「にーに、きょーちゃのとこいく!」
「ん?…おお、転ばないようにな」
「うん!」

抱いていた雛乃を下ろして走って清水のところへ行く小さな後姿を眺める

「菅原さんは行かないんですか?」
「うーん…もう少ししたら行こうかな」

清水に何やら一生懸命話しかけている雛乃の姿は母親にしているそれとよく似ていて
それを見て何となく、胸がいたくなった

あの娘のために出来る事は何でもしてあげたい
小さいうちは俺にくっついて歩いているけどそのうちそうもいかなくなってくるだろう

だから今のうちにうんと可愛がらないとな

遠巻きに2人の様子を眺めているとふと、視線をこっちに向けた雛乃が俺を見て満面の笑みを浮かべた

「にーに!こっち!」
「はいはい、今行く」

呼び出しがかかって俺は雛乃の所へゆっくりと歩いて行く
俺が近付いて行くと雛乃はパタパタと走ってこっちにやって来た

「にーに!」
「ん?どうした?」
「だっこ!」
「今日はいつもより甘えただな」
「だめ?」
「いや、全然!」

こんな可愛いお願い聞かない訳が無い
俺は雛乃を抱き上げると小さな腕が首に回ってきた

「雛乃は温かいな」
「にーにもあったかいよ」
「俺も?」
「うん、にーにといるとね、いつもぽかぽかするの。だからねひなはいつもにこにこなの」
「そっか、それは良かった」
「うれしー?」
「うん、すごく」
「えへへ」

へにゃりと気の抜けた笑みを浮かべる雛乃
その安心しきった笑みは俺に信頼を寄せてくれている証拠だ

小さな温もりを確かめるように俺は抱きしめる力をキュッと込めた


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