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- ナノ -

隣にいる雛乃がおにぎりを食べ終えたところで話しかける

「雛乃、みんなに挨拶できるか?」
「……」

うーん、まだやっぱり慣れないか

「よし、じゃあこっちおいで」

雛乃を呼んで立ち上がる
小さな手を取ってまだ挨拶していない部員の所まで歩いて行く
ぎゅっと手を強く握られた

3年は取り敢えず全員終わったはずだし
順番的に次は2年か
俺がやって来た事に気がついた西谷が声を上げた

「スガさんの妹…じゃなくてえっと…」
「はとこな」
「そうそう!はとこ!」
「…はとこじゃないもん、ひなだもん」

西谷の言葉に反応した雛乃が小さく反論した

「そっかそっかひなか!俺は西谷夕!よろしくな!」
「のや?」
「お、おう(何で俺だけ苗字…)」

何となく西谷の思っている事が分かった

「俺は縁下力、よろしくねひなちゃん」
「うん、えっと…ちから?」
「うん」

俺の予感的に2年の中で1番懐きそうな気がするな

「俺は木下久志、よろしく」
「俺は成田一仁」
「…ひしゃし、かず?」

…やっぱりサ行が言えないんだな、可愛いからいいけど

「んで、こっちが田中龍之介な」
「え?!スガさん、俺自分で言いたかったっス!」
「しーっ声!もう少し小さく」
「う、うっす…えっと…よろしくな」
「………ぅん」

俺の手を強く握りしめて、こくりと頷いたがまだまだ怯えている様子
うーん…旭は大丈夫でどうして田中は駄目なんだ?
よくわかんないけど本人なりに何かあるんだろうな

「じゃあ、次はこっちな」
「にーに」
「ん?」
「だっこ…」
「うん…おいで」

小さく手を伸ばした雛乃の脇に手を入れて抱き上げると俺の首に小さな腕を回した

雛乃を抱いたまま立っている俺の傍にいち早く寄ってきたのはさっき妹がいると話していた日向だった
日向は雛乃と目線を合わせ、にかっと人懐っこい笑みを浮かべた

「俺、日向翔陽!」
「ひなはね、ひなっていうの」
「そっか!じゃあひなちゃん、よろしく!」
「うん!」

流石コミュ力が高い日向
雛乃はここに来て俺以外に初めて安心した笑顔を見せた

「こっちの目付きが悪いのが影山!ノッポなのが月島って言ってその隣が山口!」
「っ…えっと」
「日向、早いって」
「あっ、そうか…えーっと、あっちから言うと…黒い髪の目付きが悪いのが影山飛雄」
「とび?」
「そうそう!そんであのメガネかけた背の高い奴が月島蛍!」
「…けー?」
「んで、その隣にいるのが山口忠!」
「たーし」

日向が一人ひとりの名前を言って教えるのを確認しながら言う雛乃

「あの、目つき悪いのとノッポメガネは性格悪いから気をつけた方がいいぞ!」
「?うん」

多分雛乃は日向の言っていることを理解できてないと思うけど取り敢えず頷いたって感じだ

「日向テメェ!聞こえてんぞボケェ!!」
「っひ!」
「うぉ!ほらな!怖ぇだろ?」

ズンズンと大股で近づいてくる影山
影山は雛乃の前まで行くと躊躇いがちにポン、と軽く頭を撫でた

「…とび?」
「………おう」
「影山?どうした?」
「いや、フワフワだな、と思って」

俺の問いかけに対して若干いつもより表情を柔らかくしている影山
そしてポンポンと数回撫でると影山は満足したように離れて行った

まぁ、分からなくもないけど…

去っていった影山の後ろ姿を雛乃は首をかしげて見つめていた


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