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そこで、きゅーっと可愛い音が響いた
そして俺は腕の中にいる雛乃を見詰めた
雛乃は自分のお腹がなった事に少し顔を赤らめて言った

「にーに、おなかきゅーってなっちゃった」
「…そ、そうだな、お昼食べるか!」

ああもうっ!クソ可愛いなっ

悶えそうになるのを必死で抑えて、俺は雛乃下ろして持って来てもらった弁当を広げた
そして、隣にちょこんと座った雛乃のおにぎりのテープを剥いで渡す

「ありやと、にーに」
「良く噛んで食べるんだぞ」
「うん」

大きなおにぎりを小さな口で頬張る姿はまるで子りすのようだった
ちなみに中身の具は昆布だ
…渋いチョイスだな
俺が小さい頃におにぎりで昆布とか選んでたっけ?
いやいや、多分シーチキンとかその辺だったはず

「美味しいか?」
「うん、おいしーよ、にーにもたべる?」
「俺はいいよ、雛乃が全部食べな」

一生懸命食べる雛乃を見て思わず笑みがこぼれる
ふと、顔を上げると多くの視線が集まっている事に気が付いた

「な、なんだよ…」
「もはやオカンの域だな、スガ」

大地が何故か感心したように呟いた
なんだ、オカンって…全く嬉しくない

「俺の妹もそのくらいの時あったからなんか懐かしいなぁ」
「え、日向下に兄妹いたの?」
「あ、はい!妹が1人」
「へぇ…」

既に弁当を食べ終えたらしい日向が懐かしむ様に呟いた

「といっても、俺と妹結構年離れてるんでそんなに昔の事じゃないですけどね」
「そうなんだ」
「今じゃ凄いやんちゃなんですよーこの前なんか後ろから思いっきり突進してきて頭ぶつけたんですよ」

日向の言う事を聞いてつい隣の雛乃を見た
何年か経てば雛乃もそういう事をする様になるんだろうか…
うーん、想像つかないな

俺が見ていた事に気がついた雛乃はニッコリと笑った

うん、安定の可愛さだ

「雛乃、ご飯粒ついてる」
「あり?」

ほっぺたに付いている米粒を取って口に含む

まだまだ手の掛かる可愛い子供だ
いずれは好きな人とか恋人とか出来るんだろうか…
うわ、だめだ今から想像しただけで胸が痛む

小学校とか中学に上がったらにーになんて嫌い!とか言われるのか、俺は…

うわぁ…俺ショックで死ねるかも

1人で考え込んでいたら小さな手が俺の足に触れた

「にーに、だいじょーぶ?」
「……雛乃」
「おなか、いたい?」
「ううん、大丈夫だよ」

きっと雛乃は心優しい子に育つと思う
いや、絶対に育つ

「雛乃、好きな奴ができたら言うんだぞ」
「?…うん」
「スガ、気が早いんじゃないか?」
「いや、早くない!だって来年は幼稚園に通うんだぞ?!好きなやつなんてすぐに出来るだろ?ほら、初恋は幼稚園の先生、とか良く言うじゃん!」

俺の言葉を聞いて苦笑いを浮かべる旭

「…親バカ」
「ちょっ、ツッキー!」

ボソリと呟いた月島を諌める山口
いや、まぁそこまで気にしてないから良いけどさ

「俺も自覚はあるんだけどな。でもさ、月島」
「…何ですか」

チラリとこっちの方に顔を向けた月島
おにぎりをやっと半分食べ終えた雛乃の肩を軽く掴んで月島の方へ向かせた

雛乃はよく分からないと言った表情を浮かべていたが首を傾げて再びおにぎりを食べ始めた

「めちゃくちゃ可愛くないか?!」
「はい?」
「ほら、良く見てみろって!この必死でおにぎり食べてる姿とかもうやばくない?!」
「…いや、えっと」

困惑している月島を他所に俺は続けた

「山口もそう思うよな?」
「うぇ?!あ、は、はい!思います!」

隣の山口に話を振ると面白いくらいに狼狽えた

「スガ、その辺にしとけ」
「えー…」

大地に止められ渋々口を止める
だって可愛いだろ?


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