君と私の物語 | ナノ
突然だけど
私には好きな人がいる。
その人はきっと、私のことなんて名前すら知らないだろう
けど、私はそれで十分だ
遠くから見てるだけしか出来ないのだ、彼に近づきたいだなんておこがましい
初めて彼を見かけたのは高2の夏休み
図書委員だった私はカウンター当番のため炎天下の中、陽炎がユラユラと浮かんでいる通学路を歩く
タラリと額から汗の粒が玉になってこめかみに伝った
やっと長い坂を登りきり早くクーラーが効いている図書室に行こうとした時、彼を見つけた
彼は他の部員の人達と同じように水道で水をじゃんじゃん出しながら頭を洗っている
あの格好は男子バレー部だろう。
周りには彼以外にも人はいたのに私の目に止まったのは何故だか彼だけだった
私は炎天下の中だということを忘れて彼を見ていた
彼の周りはキラキラと輝いて見えて、他の人たちと仲良さげに話し笑いあっている姿を見て胸がきゅっとなった
そんな彼が此方に視線を移した
「っ!!」
私は彼がこちらに気付く前に図書室へと向かう道へと走って行った。
ドクドクと体中に血液が巡る
走ったせいか、それとも彼にバレそうになったからなのか理由はわからないけど…でも、彼がどんな声で、どんなトーンで話すのか凄く知りたくなった
その日のことを友達に伝えたら彼女はキッパリと「それは一目惚れだよ」と言った。
友達から教えてもらった彼の名前…
「菅原孝支、君」
彼は私の隣のクラスらしい
隣のクラスだっただなんて今まで知らなかった
今まで気がつかなかっただなんて私は本当に馬鹿だってその時思った。
あの日から一年過ぎ高校生活最後の夏が来た
もちろんというか、まぁ…あれからなんの進展もないまま。
私はもう、毎年の恒例のように図書委員としてカウンター当番をしている。
いつもと変わらない日々、私は何も変わらないまま終わる
私に勇気があったら何か変わってたのかな…?
他の人よりも何か秀でている所なんてないし見た目も平凡勉強も苦手
好きな事は本を読むことくらい
ため息を一つ零した所で誰もいないはずだった図書室のドアが開いた
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