君と私の物語 | ナノ
×
「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -



俺は今、酷く後悔している
こんなつもりじゃなかったんだ
もう少し、松元さんと距離を縮めてそれから想いだけでも伝えようって思ってたんだ
だって彼女には好きな人がいるんだから
俺が想いを伝えたら彼女はきっとすごく困ってしまう

ほら、今だってどうしたらいいのか分からなくて困惑してる
折角うさぎと触れ合えて楽しそうにしていたのに、俺が余計な事を言ってしまったから松元さんは楽しめなくなってしまった

「松元さん」
「っ、」
「冗談じゃないからね、困らせるって分かってたのにごめん」

松元さんの膝の上にいたうさぎはいつの間にか降りていて餌を食べに行ってしまった

さっきまで絡み合っていた視線も松元さんが顔を俯かせてしまったため表情は分からない
でも、その表情は見えないけどきっと暗い顔をしているんだと思う
俺がそうさせているんだと思うと胸が傷んだ

「松元さん、好きな人、いるんだよね?」
「ぇ…?」

小さな声を漏らし顔を上げた松元さんの目は少し赤くなっていて泣いていたんだと、思った

「ほんとに、ごめん、泣かせて、ごめん」
「ち、ちが…これは、そうじゃ、なくて」
「?」
「ぅ、嘘みたい、で…」
「俺が嘘を言ってるってこと?」

俺の言葉に首を横に振る
その時にふわりとシャンプーの香りがして不謹慎だけど、ドキリとした

「わたし、都合のいい夢、見てるのかも…って」

予想外の出来事に言葉が出てこない
…もしかして、いや……そんなわけ

「最近、菅原君と接する時間が増えてきて浮かれて…」

彼女の瞳は次第に潤んできてポロポロと涙が零れてきた

「こ、こんな、わたしを、す、すがわら、くんが、好きになって、くれるなんて、そんなわけ、ない、のにっ……」
「そんなこと」
「そんなこと、あるの、女らしいとこなんて、1つもないし、声だって、かわいくない……っ、つりあわない、」
「松元さん!」
「っ!」

俺はたまらず松元さんの言葉を遮った
彼女の口から、そんな言葉を聞きたくなかった

「…つりあわないって誰が言ったの?」
「そ、そんなの、言われなくても……わかるよ。こ、こんな」
「ほら、そうやってすぐ自分を卑下する。どうして?松元さんはもっと自分に自信を持とうよ。」
「……だって、私…は、可愛くない、もの」
「可愛いよ、嘘じゃない。俺松元さんの笑った顔すごく好きだよ。あと好きな事になると話が饒舌になるところとか、人に気遣いが出来るところ、困っている人を放っておけないところ……ほかにも沢山あるよ?俺の好きな人のことそんな風に言わないで欲しい」
「……き」
「え?」

松元さんの呟きが小さくて聞き取れず聞き返す
いつの間にか俯いてしまっていたからなんて言ったのか分からなかった

「私も、菅原君の、笑顔が…大好きです。初めて菅原君の…笑顔を見た時、こんなにキレイに笑う人が、いるんだって思った。いつも優しくて、キラキラ輝いてて…皆に囲まれてる菅原君が、皆に好かれてる菅原君が、す、すき、です。」

俺は、耳を疑った
本当に彼女も自分の事を好きだと言っているのか?
こんなこと、あるのだろうか
いや、でも……

俺は今、松元さんがどんな顔をしているのか見たくなった
俯いている彼女に手を伸ばし髪の毛で隠れている耳に髪をかけた
彼女は肩を震わせ、ビックリしたように顔を上げた
その瞳は涙の膜が張っていて顔もリンゴみたいに真っ赤に染まっていた

その事が、さっきまでの事が冗談じゃないという事を示していた

「……かわいい」
「っへ?!な、なに言ってっ、」
「可愛いよ、ねぇ松元さん、俺と付き合ってくれませんか?」
「っ!!」

未だに触れたままの手を頬まで持っていき指の腹でそっと撫でる

「う、嬉しい…ほんとに…ゆ、ゆめ、みたい」
「夢じゃないよ、夢だったら困る」
「うん、うん…私なんかで、良かったら…よろしく、お願いします」
「…なんかじゃない、松元さんだから好きになったんだよ」

俺がそう言うと松元さんは恥ずかしそうにそしてふわりと花が開くようように笑った

ああ、俺はきっとこの瞬間を忘れることは無いだろうなってそう思った
<<>>