君と私の物語 | ナノ
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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
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図書室で松元さんと勉強をしていたのだが、いつの間にか室内には俺と彼女の二人きりになっていた
カウンターの方を見ても司書さんの姿は無い

その事を松元さんに伝えようかと隣を見ると彼女は机の上に伏せて気持ち良さそうに寝息をたてていた
夏の暑さはやはり人の体力を奪ってしまうのかそれとも最近眠れていなかったのか彼女が起きる気配は全く無い
そんな彼女を見ると少し悪戯心が湧いてきた

「ん…」

試しに彼女の頬を軽く突っついて見ると眉間に皺を寄せるものの直ぐにもとに戻った
松元さんの頬は柔らかくマシュマロみたいだった

「おーい」
「……」
「松元さーん」
「…すー」

…爆睡してる
こんなに無防備って俺脈ないんじゃないか?
そんなことを考え若干落ち込んでいると不意に彼女の口がもごもごと動いた

「…?」
「…すき」
「っ?!」
「……わ、…くん」
「え、」

い、今誰かの名前言ったよな?!
やっぱり松元さん好きな奴いるんだ
うわ…結構、いや、大分ショック
俺の知ってる奴か?
知らない奴も嫌だけど知ってる奴っていうのも何だか複雑だ

「…松元さん」
「…すーすー」

…寝てる、よな?
ここには俺と彼女の二人きり
他には誰もいない

「俺さ、好きな子がいるんだ」
「…すー」

勿論話しかけたところで返事は無い

「…相手に好きな人が居るってわかったんだけど、やっぱり諦められない俺って嫌な奴?
でも、好きな人がいるのにこうして会いに来るのって彼女にとっては迷惑だったりするのかな
どうしたらいいのかわかんねーや」

もう一度彼女の柔らかい頬に手を伸ばしそっと撫でる

「……依伽」
「…すー」
「………好きだ」
「……すぅ」
「…俺を、見てよ」

今までこんなに人を好きになったことがなかった
こんなに胸が痛くなるものなんだな

口に出して改めて思った、やっぱり俺は松元さんの事が好きだ
諦めたくない。



* * * *


それからどのくらい時間が経ったのか彼女が目を覚ましたときには外はすっかり茜色に染まっていた

「え?!う、嘘?!い、今何時、え…菅原君何で!?」
「松元さんがあんまりにも気持ち良さそうに寝てたから起こすのが可哀想だと思って」
「えぇ!?うわ、私変な寝言言ってなかった?!」
「……うん」
「その間はなに?!」
「何も言ってなかったよ」
「ホントに!?」
「ほんとほんと」
「……」

疑うような目で見つめてくる松元さんの視線を躱し勉強道具を片付ける

「ほら、帰る準備しよ。送っていくから」
「うん…え?!今なんて?!」
「?送っていくって」
「わ、悪いからいいよ!!」
「気にしなくていいって、帰りつく頃には暗くなるし危ないから」
「でも、何時間も爆睡していた挙句送ってもらうなんて」
「気にしない気にしない。あ、勿論松元さんが嫌だったら無理にとは言わないけど」
「迷惑なんてもんでもない!!……凄く、嬉しい」

筆箱に筆記用具を片付けながらそういう彼女の顔は見えないけどどうやら嫌がってはいないみたいだ
髪の間から見えた耳が赤く染まっていたのは外の夕日のせいじゃないと思いたい


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