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第3回BLove小説・漫画コンテスト結果発表!
テーマ「人外ファンタジー」
- ナノ -
6
1レース目の選手は退場になり
私は重い足取りで自分のクラスのテントに戻る

…蛍ちゃん、怒ってるのかな
絶対に嫌がりそうだもん

「愛乃おつかれー」
「あ、うん、ありがとう」

すごい良かったよーなんて言われても全然嬉しくない
当事者になったら分かるよ

そのあとも暫く皆に囲まれてやっと開放される

クタクタになって取り敢えず腰を下ろし辺りを見回すけどそこには蛍ちゃんの姿は無い
忠君の隣に行って蛍ちゃんの所在を聞くと

「ツッキーなら愛乃ちゃんが帰ってくる前に何処かに行っちゃって…」

教えようかと思ったけど囲まれて近づけなかったから、と申し訳なさそうに言った

「ううん、ありがとう!私、探してくるね」
「うん、いってらっしゃい」

忠君に手を振りテントから出る

蛍ちゃん、何処に行ったんだろう…
多分グラウンドにはいないと思うから校舎の方かな

キョロキョロと蛍ちゃんが行きそうな場所を探す
部室の方には居なかったし、第2体育館かな?

でもそこにも蛍ちゃんの姿は無かった

うーん…
人目につかないところかな?
それなら…

1つだけ思い当たった場所に向かうとそこに蛍ちゃんはいた


「蛍ちゃん、見つけた」
「…よくあんな恥ずかしいこと言えるよね」

私の姿を視界に入れた瞬間ふい、と横を向いてしまった

ここは校舎裏の非常階段
グラウンドからは離れていて放送の音も辛うじて聞こえる程度だ

「でも本当のことだよ?…すっごく恥ずかしい思いはしたけど」

蛍ちゃんの顔を覗き込もうとしたら大きな手が私の目を塞いだ

「け、蛍ちゃん?」
「…暫くこっち見ないでくれる」
「……照れてる?」
「はぁ?違うし」
「じゃあ見てもいい?」
「ダメ」

取り敢えずこのままの方が良いのかな?
見えない視界の中で私は蛍ちゃんに話しかける

「蛍ちゃん、後でこのパン2人で食べようよ」
「愛乃が取ったんだから自分で食べなよ」
「うーん、でも私も蛍ちゃんも恥ずかしい思いしたし
それに美味しいものは2人で分け合ったらもっと美味しいから」

そう言うと漸く離れた手
一気に視界が明るくなる

蛍ちゃんの頬はまだほんのりと赤かった
多分私もだけど…

でも照れてる蛍ちゃんを見るのは滅多に無い事だし、参加して良かったのかな?
来年は絶対参加しないけど

幻のパンを袋から出して半分にちぎる

「はい、蛍ちゃん」

蛍ちゃんに半分を渡し自分の分のパンを口に含む

「〜っ!」

お、美味しい!!
ノーマルなパンなのにすっごくふわふわで口の中でふわって溶ける
なにこれ、食べた事無い!
ほんのりとバターの甘さがあって何個でも食べられちゃいそう

「お、美味しいね、蛍ちゃん!!」
「……まぁ」

蛍ちゃんも目を丸くしてる
流石幻のパンと呼ばれてるだけはある

また食べたいけど来年もこんな思いはしたくない!

幻のパンを1口1口味わいながら食べる


「すっごく美味しかった!」

どこのパン屋さんで売ってるんだろう?
並んででも食べたいパンなのに…

「また食べたいね」
「……来年はホントにやめてよね」
「も、勿論だよ!!」



こうして約束したのに来年クラスの皆に頼まれ結局またパン食い競争に参加してしまうのはまた別の話だ


そして何故か体育祭後に見知らぬ(女の)先輩たちからお菓子をたくさん貰うようになった
お菓子は美味しいけど…

蛍ちゃんにそれを話すと微妙な顔をされた