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「蛍ちゃん、あの時の約束覚えてる?」
「…何のこと?」
「ひどーい!!約束したでしょ?私が大きくなったらウエディングケーキ食べさせてあげるって言ったのに!!」
「っ、」


丁度僕も同じ事を思い出していたから心の中を覗かれたのではと内心ヒヤリとした


高校を卒業しお互い違う大学に通うようになり僕たちは今久しぶりに2人で街に出掛けていた
偶然通りかかった道の通りにウエディングドレスが飾ってあったのを見てぼんやりと当時の事を思い出していたのだ


「…そんなこと言ったっけ」
「蛍ちゃんから言ったんだよ?都合が悪くなるとそうやってすぐとぼけるんだから」
「……なかなか言うようになったね、愛乃」
「ふふ、そう?」


コロコロと楽しそうに僕の隣で笑う愛乃
その横顔は少し大人びて見える
少し前までならムスっとして不貞腐れてたのに
そう言えば女の成長は早いって誰かが言ってたな


「…覚えて無いワケないでしょ」
「??今何か言った?」
「別に何も言ってないよ」
「えー?!今絶対何か言ったでしょ!」


……やっぱり前言撤回
大人びて見えたのは気のせいみたいだ

その事に少し安堵して僕はふっと笑みを零した


先に歩き出した僕の後ろから小言を言いながらついて来る愛乃
振り返りか細い腕を引き寄せる


「っ?け、っん!!」
「………後もう何年か辛抱するだけなんだから我慢しなよ 」


そっと触れるだけの口付けをし耳元で囁くと面白いくらいに顔を真っ赤にさせた愛乃と目が合った


「っ!!こ、ここ…人がいるのに!!」
「誰も見てないよ、丁度人もあんまりいなかったし」
「そ、そういう問題じゃっ!」
「ほら、行くよ」
「っ〜〜!!」


手を差し出すとちょっといつもより高めの温度の手が重ねられた

普段なら絶対やらないような事も、こんな反応が見られるならたまには良いかな


「……蛍ちゃん」
「…ん?」
「…私、ずっとまってるから」
「、 」


赤い顔をした顔でそういう事を言うのは反則だと思う
僕は返事をする代わりに握っていた手を少し強く握り返した