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いただきます、の挨拶をしてから意気揚々とフォークを手に取りケーキを口に運ぶ口に広がる甘さに思わず頬を緩めてしまう
それは隣にいる愛乃も同じだったらしく顔を綻ばせていた
「おいしーね!」
「うん」
2人で笑いあいながらケーキを食べる
「あ、けいちゃん、一口どうぞ!」
「…?」
自分のチーズケーキを一口掬って僕にフォークを向ける
「さっきけいちゃんに一口あげる約束したから!」
だから、はい
そう言って満面の笑みを浮かべてもう一度差し出す
僕は躊躇いながら一口口に含んだ
チーズの甘さとほんのりと酸味が効いていて子供の舌にはすこし大人の味がした
「どう?おいしい?」
「……ショートケーキのほうがいい」
「ええー!」
「はい」
頬を膨らませ不満げな表情を浮かべる愛乃に自分のショートケーキを一口差し出す
するとさっきまでのムスっとした表情から一変しキラキラと目を輝かせてパクリと食べた
「おいしいー!」
「でしょ?」
「でもチーズケーキもおいしいもん!」
「まずくはないけど僕はショートケーキのほうが好き」
不味くはない、その言葉に愛乃は満足したのかそれ以上なにも言わなかった
「あ、あのね!昨日いとこのあーちゃんの結婚式に行ったの!そしたらね、すごーくおっきいケーキが出てきたの!」
思い出した様にそう言って愛乃は両手を目一杯広げて見せた
「本当にそんなにおおきかったの?」
「ほんとだよ!だからね、愛乃も食べたいってお母さんに言ったの。そしたらお母さんがあれは結婚式じゃないと食べられないんだって…」
「へぇ、そうなんだ」
「…うん」
ショボンと肩を落とす愛乃
ほんとにこの頃から表情がコロコロ変わって忙しい奴だ
そんな愛乃を慰める為に僕は言った
「じゃあ、僕がいつか愛乃ちゃんに食べさせてあげる」
「?!…ほんと!?」
「うん、僕と愛乃ちゃんがおおきくなったら」
「やったー!じゃあ、好き嫌いしないでいっぱい食べないと大きくなれないね!!」
「………。」
「けいちゃん、忘れないでね!!」
「うん、忘れない」
「約束だからね!」
そう言って2人で指切りをした
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