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「アイツ愛乃のこと名前で呼んでたっけ…」
去って行く忠君の背中を見送りながら蛍ちゃんが呟いた
「あ、さっきね、その話をしてたの!」
忠君と話した内容を一通り伝えたところ、蛍ちゃんの機嫌は治るどころかますます悪くなっていた
眉間の皺が一段と深くなっていた
「あ、あれ?蛍ちゃん…?」
なんで機嫌悪くなってるの?
「本当馬鹿だよねー愛乃は」
………なんで?
あれ、私何か馬鹿な事いったかな?
「あんまり他の男に名前とか呼ばさないでよね」
「え?でも忠君は昔から一緒にいたじゃん」
「山口だって男でしょ」
「まぁそうだけど…」
そのまま私の手を取って歩き出す蛍ちゃん
どうやら私のスーパーまでの買い物に付き合ってくれるみたいだ
蛍ちゃんは何時も意地悪だけどこういう優しいところ、凄く好き
「でもね、蛍ちゃん」
「…なに」
未だに不機嫌な背中に声をかける
「確かに忠君にも名前で呼んで欲しいって思ったけど、でもね、私の名前を呼んで胸がポカポカするのは蛍ちゃんだけだよ?」
蛍ちゃんは私が考えた精一杯の言葉を聞いてふっと笑って
「本当愛乃って馬鹿だね」
さっきの馬鹿とは違って今度の馬鹿には優しさが溢れていた
「蛍ちゃん!」
手をギュッと握って蛍ちゃんの顔を除き込んだ
「大好き!!」
愛情表現は人それぞれ
私はちゃんと分かってるよ!