EQUILATERAL 楽しみだねぇ。 紙パックの詰まったビニール袋を揺らして、夏目が上機嫌に言う。 頷きながら視線を遣ると、心底楽しそうな顔をしていて、少し不安になった。 こいつが楽しそうな時はロクなことが起きない。 城山自身、今日はかなり浮かれているのだが、神崎さんを守らねば。と気を引き締め直した。 二人が向かうのは神崎邸。 対男鹿作戦を考える。というなんとも可愛らしい神崎の発言に乗っかり、ちゃっかりお泊まり会に持ち込んだのは夏目だ。 「神崎くんの部屋、どんなのかなー」 流石に入りにくいだろうと、神崎は外で待ってくれている手筈になっている。 角を曲がるとすぐ、目立つ緑のジャージが見えた。 「遅ぇ」 「すみません、神崎さんっ」 深々と頭を下げる城山を一蹴りして、神崎は前に立って門を潜った。 表ではなく、裏口のような木の扉で、開けると純日本風の庭が広がる。 夏目は興味津々といった様子で目線をあちこちへと巡らせ、城山は恐縮したように足元の飛び石を見つめている。 飛び石に沿って庭を横切り、一般に離れと呼ばれるものであろう建物に着く。 どうやらここが神崎の部屋のようだ。 「すごいねぇ」 「そうか?普通だろ。 あ、風呂は母屋だからな」 「……ぇ」 「…ん、あぁ。 一度に全員入れるし、一緒に行くから安心しろ」 部屋の中へ入ると、畳敷きの部屋にいたって高校生らしいラックやコンポが並んでいた。 床の間には、何故か金属バットが立て掛けてあって、彼らしいけれど。 近くにいる時は、おとなしくしていた方がよさそうだ。 「男鹿にあって神崎さんにないもの…そんなのありますかね」 こと神崎に関して、盲目的になりやすい城山は真剣に唸る。 根本的に強さが違う。という事実に思いいたってはいるが、それでも神崎が勝てる方法を見つけだしたい。 「素直さ、とか。 神崎くん、ツンデレだからさー」 一言多い。と殴られた。 一理あると思いはしたが、目の前で夏目が殴られたうえに、神崎がお前もかと言わんばかりに睨んでくるので、城山は大きく首を振った。 「…性格はほっとけ。 あとむかつくから、そのツンデレとかいうのやめろ」 「えー、ワガママだなぁ」 そうしてまた殴られながら、なぜか夏目は嬉しそうだ。 少し羨ましいと思いかけて、城山は慌ててその思考を打ち消した。 「…あ! 男鹿には嫁がいますよ」 「あぁ、マカオから来たとかなんとかいう、メチャクチャなのがいるな」 「やっぱり、守る家庭があると強くなるんじゃないですかね」 「家庭か…」 思い浮かべてみるが、自分が家を守る状況は想像がつかない。 むしろ自分は守られている側であるように思うし、そういったことは求められていないようにも思う。 「お嫁さんでも貰っちゃう?」 「嫁か…」 一人の顔が浮かばないでもなかったが、それに自分で驚いた。 「…ありえねぇ」 「あー、神崎くん、誰か気になるこいるんだ?」 「っそ、そんなんじゃねーよっ!!」 「怪しいなぁ…。 まぁ、いっか。 じゃあさ、俺なんてどう?」 「は?」 「神崎くん、どんなのが好み? スカート派、ショートパンツ派? あ、ワンピースとかがいい?」 勝手に盛り上がり、至極楽しそうに語るが、その内容は恐ろしいことこの上ない。 城山は呆気にとられてしまっているし、神崎は握られた手をなんとか振りほどこうと必死だ。 「僕はワンピース派なんだけど、神崎くんに合わせるよ。 あ、もちろん神崎くんが着るのでも構わないけど。 それならショートパンツがいいなぁ」 「わけがわからんっ!!」 「子作りも、俺が手取り足取り腰取り教えてあげるよ。 あ!子供も生まれたらまた背負って訓練できるし、一石二鳥だね」 「夏目、お前と神崎さんじゃ、子供は産めないぞ」 やっと城山が声を出すが、問題はそこではない。 手を握られたまま、器用に城山に蹴りを入れる。 「もういいっ!! お前らにきいた俺がバカだった!! …もう疲れたから、風呂行くぞ」 「すごーい。広いねぇ」 「うちのやつらがまとめて入ることもあるからな」 家庭内にあるとは思えない、銭湯のような浴室だ。 洗い場もいくつかあり、湯船にはかなり上背のある城山を含め、同時に三人が入っても、まだかなり余裕があった。 「なんだか旅行に来たみたいだねー。 楽しいなー」 「そういや初めてだな。 お前らと風呂入るのなんか」 神崎も二人の姿を物珍しそうに眺める。 城山は髪を下ろし、なぜか夏目が持っていたゴムを借りて、後ろでひとつに纏めている。 夏目は女性がするように、タオルで器用に纏めあげていた。 「長いと面倒だよな。 洗うのも乾かすのも」 「慣れればそうでもないよ。 …それにしても神崎くん」 夏目に改めて凝視され、神崎は少し後ずさった。 後方にいた城山も合わせて下がる。 「脱ぐと細いよね。 いつも緩い服だからわかんないけど」 「うるせぇ。 テメェらがごついんだよ」 「それに色も白いしさ」 鎖骨を指先で辿るように撫でられ、背中が粟立った。 距離を取ろうと更に下がるが、夏目もついて近寄ってくるので、一向に差は離れない。 「毛もあんまり生えてないし、女の子みたいだね」 「頭沸いてんのか、テメェ?! つか生えてねぇんじゃなくて色が薄いだけだ!!」 「そうかなぁ? 少ないと思うんだけど」 ついと脚を撫で上げられ、驚いて仰け反った勢いで神崎は、体勢を崩して後ろに倒れた。 水中に沈み混む手前で、背後から伸びた腕に支えられ、なんとか転倒から免れる。 自宅の風呂で溺れるなんてとんでもない。 城山に支えられたまま夏目を睨み付けようと視線をあげれば、端整な顔がすぐ目の前にあって、また倒れそうになった。 「だ、大丈夫ですか、神崎さん」 城山を仰ぎ見れば、真っ赤な顔で心配そうに見つめてくる。 「おぅ、悪いな」 「い、いえ///」 「あ、城ちゃん、そのまま!!」 夏目が急に叫ぶものだから、思わず力を入れてしまう。 「ぅわあ、ほんとに薄いんだねぇ」 そう弾んだ声でいう夏目の視線は、水中に向けられていて、掌が脚の付け根を掠めた。 「…っな!?」 慌てて閉じようとする脚を、間に入り込むことで阻まれる。 「あ、なんかちょっとおっきくなった?」 「ち、違っ…」 羞恥で一気に顔に熱が集まる。 その上、夏目の指先がそこに直接触れるものだから、体の熱は更に追い上げられた。 やわやわと握りこまれ、体が震える。 暑くて頭の芯も揺れる気がした。 「っ……ぁ、夏目」 「丸見えだね、神崎くん」 「黙、れっ…」 「ねぇ、城ちゃんも……あれ?」 先ほどから神崎を背後から抱えたままで微動だにしない城山を不信に思ってはいたが。 夏目が合わせて動きを止めたことで、そっと火照った頭のまま城山を見上げると、冗談ではなく茹で蛸のように真っ赤な城山が、鼻血を流して固まっていた。 「し、城山…?」 「かん、ざき…さ、ん」 そのまま一人、真後ろに倒れ込む。 浴槽から津波のように水が溢れだし、神崎と夏目を頭から波が襲った。 「テメェのせいだからな」 城山の額のタオルを替えてやる夏目の背中に、神崎は不機嫌に蹴りをいれた。 リクエスト:夏神/城神 3人で円満ラブラブ神崎組。性的関係あり。 >春うららさま 無駄に長くなりました。 仲良く作戦会議とかしてたら可愛いなと思ったんですが。 細かくリクエストくださったのに、全く活かせず謝罪のしようもございません。 城ちゃんは純情童貞でプラトニックラブ推奨なので、エロ書けませんでした…orz 返品いつでも可能でごさいますです。 リクエストありがとうございました。 ← |