バスロマン




「熱っ…」

冷えた体を差し入れると、温度差に指先が痺れた。
ゆっくりと膝下まで浸かり、一気に沈み込む。
湯船から大量に水が溢れだし、タイルに投げ出された洗面器が流れて、扉にあたった。

全身を伸ばして、尚余りある浴槽で大きく伸びをする。
姫川の家で一番気に入っているのが、この浴室だった。
湯船に浮かぶ黄色いアヒルは、いつも取り巻きを連れている神崎に、一人で広い風呂は寂しいだろう。と冗談で姫川が買ってきたものだ。
馬鹿にするなと反発はしたが、今では必ず浮かべて入る程度に気に入っていた。

揺れる波紋に乗ってすいよってきたのを指先で弾く。
ゆらゆら危ういバランスで揺れるのが可愛らしい。
交互に寄ってくる二体のアヒルと戯れていると、脱衣場に誰かが入ってくる気配があった。
この家には、神崎と姫川の二人しかいないはずであるから、当然、それは姫川だろう。

「なにやってんだ、テメェ」

湯船から出ないままで、声をかけると、すぐに扉が開かれ、既に服を脱いだ姫川が入ってきた。

「って、なに入ってきてんだ、ハゲ」
「ハゲてねぇよ。
つか誰んちの風呂だと思ってやがる」

そういう問題じゃねぇ!!と立ち上がりかけるが、姫川の視線を感じて再び湯船に沈み込む。

「見てんじゃねぇよ、変態」
「そりゃ残念」

一頻り罵声を浴びせてはみたが、姫川は全く気にした様子もなく、髪を洗い始める。
一体どういう原理になっているのか。
意外にあっさりと解れていく髪を不思議に思って見つめていると、銀色の髪の隙間から、視線が絡んだ。
サングラスとリーゼントを外した姫川は、何度見ても見慣れることがない。
視線が合った瞬間、なんだか心臓が騒がしくなって、慌てて目を逸らす。
備え付けの小さな冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して一気に煽った。
風呂場に冷蔵庫なんて無駄だ無駄だと言い続けていたが、初めて役にたったようだ。

「…お前、いい加減慣れろよ」
「……無理。まじ誰だ、テメェ」
「………」

溜め息と共に、シャワーで泡を流して、邪魔な髪をひとつに纏めあげる。
未だに目線を逸らす神崎を抱き締めるように、背後から湯船に滑り込んだ。

「ぅわっ…」

一人分の体積が増えたのと、神崎が驚いて暴れたのとで、盛大に水が溢れだす。
アヒルが一体流されて、タイルの上に転がった。

「触んな、ばかっ」

すぐさま出て行きたかったが、姫川の前で湯船から出るのにどうにも抵抗がある。
向かい合うのも恥ずかしく、悪態吐きながらも、大人しく背中を預けることにした。
残ったアヒルを手で作った水鉄砲で揺らす。
こちらのアヒルは少し大きくて、密かに城山と命名している。


「…おい、姫川」

抱き抱えるように腹にまわった腕を見逃していたら、首筋を鼻先が擦りあげ始めた。
何がいいのか、姫川はよくこうして項に鼻先を潜らせる。

「なんか当たってるんだが…」
「いや、まぁ…そりゃしょうがないだろだろ」
「テメ、さっきヤッたばっかだろうがっ!!」
そうして立ち上がろうと、姫川の腕を掴むが、更にきつく抱き締められるだけで、不安定なその姿勢ではうまく力も入れられない。
「まぁ、待てって」


「…――っぁ」
濡れた髪が頬に触れたかと思うと、生温い舌先が筋を辿るように項を這い上がった。
言い様のない痺れが背筋を駆けあがり、喉が大きく反る。
咄嗟に唇から漏れた小さな声に気をよくしたのか、細く尖らせた舌先は首筋から耳朶へと流れ、執拗になぶる。

「…っん……ひめ、…」

「かんざき…いい香りがする」

同じシャンプーなのだから、姫川も同じ香りがしているはずだが、そんなことに反応もできない。
腹にあったはずの掌は胸に移動し、甘く撫で上げながら、ふいに胸の突起を掠める。
直接的な刺激でない分、体が疼いた。

「……真っ赤」

耳元で、淫猥な水音に混じって囁きを吹き込まれ、一層全身に熱が廻る。
熱い湯に浸かっているのも相俟って、全身が熱を持って激しく脈打ち、頭の芯が朦朧とした。

「――ぅ、ぁあっ」

意思とは無関係に、ゆるゆると立ち上がり始めた中心に爪を立てられ、嬌声があがる。
音は浴室に反響し、自身の耳を犯した。
声を抑えるために噛んだ腕にギリギリと歯がくい込み、汗や生理的な涙で塩の味が口に拡がる。
腕の皮膚が裂ける手前で、やんわりと腕を取り上げられた。

「っは――」

「傷になっちまうぞ。
ほら、こっち向けよ」

腰を持ち上げて反転され、取り上げられた腕はそのまま姫川の首へとまわされる。
向かい合う形で微笑まれ、更に頭が朦朧とした。

「ひめぇっ…」
「はいはい。
可愛いな、お前」

視点の合わない瞳に涙を浮かべ、ねだるように名前を呼ぶ神崎の唇をそっと塞ぐ。
ゆるりと舌を差し込めば、応えるように絡み付いた。

「ん…っ神崎、
しっかり、掴まってろよ」
「はぁ…んっ……」

首に廻された腕に軽く触れて確認し、両手を下へと滑らせる。
既に一度押し開いたそこは、指先を潜らせると簡単に呑み込んだ。
異物が侵入する感触に、自然神崎の身体が少しずりあがった瞬間に、立ち上がった自身の先端を指を引き抜きながら押し当てる。
ゆっくりと沈み込み、呑み込まれる。
いつも以上に熱を持って絡み付くそれに目眩がした。

「ぃっ…うぁ」
「っかんざき、動くぞ」

腰を掴んで、突き上げるのに合わせて揺すってやると、首に廻された腕に力が入る。
耳のすぐ傍で、必死に堪えながらも漏れる喘ぎと吐息がかかって、一層煽られた。
一気に入り口まで引き抜いて、最奥を突き上げる。
律動に合わせて目の前でほんのり熱を持って染まった神崎の白い喉が仰け反って、思わず噛みついた。

「…んぁっ…は、ぁ

ひ、めぇ……や…んぅ、」


「かん、ざきっ…――」








一気に襲う虚脱感に次いで、覆い被さってきた身体を抱き留める。
睫毛にかかる汗を拭って、天井を見上げた。





「…もっかいシャワー、浴びるか」

















リクエスト:姫神
お風呂orこたつでぬくぬく裏


>筑紫さま
こここ、こんなで大丈夫でしょうかっ??
むしろ"ぬくぬく"というか裏がぬるくてスミマセンorz
どうすればエロくなるのか←←
残念クオリティで失礼いたしました!




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