GotItAllWrong ずっと想いを告げられずにいた。 臆病だったのもあるが、それだけじゃない。 俺は思い上がっていたのだ。 あいつも俺を好きなんじゃないかって。 だから、まだ先でいいと思っていた。 そんなあいつに恋人ができたと知ったのはつい先日。 頭を殴られたような感覚。 暫くして頭を過ったのは、相手を知りたいという思い。 なぜ俺じゃないのか。 「よう、神崎」 昼休みの屋上で、いつもの紙パックをくわえた神崎を見つけた。 ブロックに腰かけ、空を見上げて脚を力なく投げ出している。 「…なんだ、男鹿か」 こちらに一瞬だけ視線を寄越して、また空へと顔を向ける。 当たり前のように隣に腰かけ、並んで空を見上げた。 「なに見てんだ」 「別に。いい天気だなと思って」 空は馬鹿みたいに澄み渡っていて、疎らに浮かんだ雲がゆっくりと流れる。 「神崎さ、」 「…神崎"さん"だろ。 いい加減殴るぞ」 「神崎さん」 「気持ち悪っ」 「どっちだよ!!」 こんな馬鹿みたいなやりとりが好きで。 ずっとこうしていたい。 こいつもそう思ってるものだと思っていた。 「お前、恋人できたって…まじ?」 「……っ」 どっから聞いてきたんだよ。なんて小さく呟くのが聞こえた。 両手で顔を覆う指の隙間から覗く肌がほんのり紅い。 「…どんなやつ?」 「……すっげー強いやつ」 少しの間があって、観念したように答える。 「俺より?」 「多分な」 「そんなやついるわけねぇ」 「どんだけ自信過剰なんだよ、お前」 神崎は冗談だと思ったのか、からからと笑っていたけど。 俺は馬鹿だから。 そいつに勝てば、神崎は俺を好きになるんじゃないかと考えていた。 負けるわけなかった。 翌週。まだ神崎の相手は誰かわからないままだったが、取り巻きもつけずやけに急いで学校を出る神崎を見かけて、そいつに会いに行くのだと知れた。 ここ一週間様子を見ていても、休み時間に特別誰かと会っていることはなかったので、外部の人間なのかと予想は立てていた。 やはり当たっていたのかと、なら尚更顔を拝まなければならない。 そっと後をついていった。 学校から、そう離れていない公園に入ると、神崎は噴水の淵に腰かけて携帯を開いた。 相手からのメールでも確認しているのか、単に時間を確認したのかはわからない。 どちらにせよ、待ち人はまだのようで、また空を見上げて脚をブラブラさせていた。 こんな風に隠れていなくても、偶然を装って合流し、堂々と相手を値踏みしてやればいいんじゃないか。と、15分ほどして思い至る。 相手を打ち負かすにしても、神崎本人の目の前の方がいいはずだ。 「ぐ、偶然だな…、奇遇だな?」 自然に声をかけようと口の中で言葉を選び、ベンチの陰から立ち上がる。 ふと、神崎がこちらを振り向いて目があった。 ひどく嬉しそうに笑って立ち上がるものだから、練習した言葉は頭から飛んでしまう。 「…よ、よう」 ぎこちなく片手をあげて一歩踏み出したその時、自分にかかる大きな影に気づいた。 「とら!」 そう呼ぶ神崎の声で、目があったのは自分の勘違いで。 向けられた笑顔も、自分にではなかったことを知る。 思わずそのまま身を隠した。 幸いなことに二人は、まだ半分茂みの中だった自分には気付かなかったようで、そのまま影は通りすぎ、噴水の淵で合流した。 咄嗟に隠れてしまったが、相手を確認するという当初の目的を忘れたわけではない。 そっと覗くと、よく知った長身が小柄な神崎と並んでいた。 広い背中に健康的に焼けた肌。無造作に紅い髪を掻きあげる筋肉の盛り上がった腕。 「遅ぇよ」 「悪ぃ悪ぃ。バイトが少し長引いてな」 少し離れた噴水の前。 時間に遅れたらしい東条に、言葉では不機嫌そうにしているが、嬉しそうな神崎の姿がある。 「ほら、行こぉぜ」 「って、手繋ぐな、馬鹿!!」 「あ?いいだろ、付き合ってんだから」 「そういう問題じゃねぇ!!」 手を握られたまま、連れられていく神崎は耳まで真っ赤で。 目が離せなかった。 二人が見えなくなるまでそのままで、気付けば中途半端な姿勢のせいで脚が痛んだ。 ゆっくりと立ち上がり、先ほどまで二人がいた噴水の淵に腰かける。 真似をして、また空を見上げてみた。 少しくすみ始めた空に、細い飛行機雲が消えかかっている。 「……幸せそうな顔しやがって」 あんな表情、向けられたことなかった。 あんな表情ができるなんて、知らなかった。 「俺じゃ、ダメなのかよ…」 自分には、あんな表情はさせてやれない。 ならせめて強さだけは。 誰よりも強くなってやる。 もちろん東条より。 そう誓って、 背後の噴水にそのまま倒れこんだ。 いつか絶対、 俺を選ばせてやる。 リクエスト:東神/男神 東神←男で、神崎を諦めきれない男鹿と幸せカップルな東神 >陸斗さま ♀♂どっち神崎でも読めるようにしてみたつもりです。 お好きな姿をイメージしてください← というか東条ほとんど出番なくてスミマセン←← 気付いたら三人絡んでなかった( ̄□ ̄;)!! 青春させてみたら、パラレルばりに違和感が…←← 素敵なリクエストだったのに、クラッシャーで申し訳ないですorz こんなで宜ければお持ちください。 ← |