またひとつ、年が離れる。







「もう、20歳なんだ…」


部屋に二人きり。
床に寝そべって天井を見上げ、ぽつり呟く。

「まぁな」

どうでもいいというように、相槌が返ってきた。

彼にとってはどうだっていいのだろう。
いや、これで一応成人し、粗方法律の範囲内で定められたことは自由にできるようになるのだ。
それなりの感慨はあるのだろうが。
それは男鹿が受け止める事実とは少し違う。

上から見れば、たった2歳なのかもしれない。
しかし、こちらからしてみれば、その差は大きく、いつまで経っても追い付けない背中に、焦りや苛立ちが募るのだ。
どうしたって年齢が追い付くことはない。
2歳だってとてつもなく大きく感じるのだ。

「また離れちまった…」

それが今日、更に少し離れた。
いや、実際は何も変わってはいないのだが。
負い目がある身としては、字面のことだけでも気になる。

「なんだ、そんなこと気にしてんのか」

少し膨れている姿がやけに幼くて、神崎は小さく笑う。
それに気付いて、更に膨れた。

「去年は、誕生日知らなかったって怒ったくせに」
「っ…そりゃ、」
「知ったら知ったで、機嫌悪くなるたぁ、どういうことだよ」
「違っ…別に、機嫌が悪いわけじゃねぇよ」

ただ、ほんの少し、年齢と一緒に自分から離れてしまうような気がしてしまうだけ。
この微妙な感覚は、きっと彼には伝わらない。

ふっ。と隣で笑う気配がして、天井しか映らなかった視界が、神崎に刷り変わる。
こちらを見下ろす口元から下がるチェーンのピアスが、彼が変わっていないことを伝えていた。

「ばーか」

「…は!?」

「何が変わるわけでもないだろ。
何歳だろうが、俺にはお前で、お前には俺がいればいいんじゃねぇの
それとも、3つ上の俺はいらないってのか?」

ぶんぶんと、音がしそうなほど首を振る。
また笑われた。

「一生、好き」
「そーかよ」
「かんざき」
「ん」


「誕生日、おめでとう」













来年も、
笑って言おうと思う。





年の差は、若い時ほど気になるもの。




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